クリエイターは日々さまざまな作品を生み出している。普段クリエイターはどのような環境で作品を作っているのだろうか? そんな疑問を解決するべく、クリエイターさんのお宅を訪問して作品誕生の背景を探ります。第3回目は個性豊かな作風を持つ2人のクリエイターが立ち上げたアニメーション企画・製作会社「弥栄堂フヰルム」のスタジオにおじゃましました。
≪塚原重義 プロフィール≫
1981年生まれ。 2004年頃からアニメーションを制作。2005年前半に『ウシガエル』で注目を集め数々の賞を受賞、2006年には『カラクリ戦記鬼ヶ島』(全6話)をWeb配信。2007年にはテレビ放映作品『アームズラリー』(全13話)を監督し、オリジナルのビジュアルイメージを持った作品を生み出している。
≪すなふえ プロフィール≫
1980年生まれ。2003年ごろからFLASHアニメを制作。2006年頃から本格的に健全な制作活動を開始する。2007年の三井製糖のCMにも起用されたテレビ放映作品『かくざ父さん』(全39話)の制作を皮切りに『海底ミカンの皮マイル』やTV番組「ドーリィ☆バラエティ」内の人形劇などパペットアニメーションの監督/脚本/演出/制作を手掛けている。
<スタジオ化の経緯について>
弥栄堂フヰルムは、東京・渋谷のマンションの一室にスタジオを構えており、近くに駅や繁華街があることから何かと便利な拠点となっている。部屋にはPCのほか、撮影に使った道具やレトロなアイテムが所狭しと並べられており、都心にある部屋と感じさせない空間を演出している。UG-K
このスタジオに移ったのはいつからでしょうか?
塚原重義
2008年の2月ですね。前の会社を辞めたときにあるプロデューサーに声をかけていただいたのがキッカケで会社を立ち上げました。
すなふえさんもちょうどタイミングが良かったので一緒にやることになりました。
すなふえさんもちょうどタイミングが良かったので一緒にやることになりました。
UG-K
個人として活動しているクリエイターが多い中、スタジオを立ち上げた理由は?
塚原重義
僕は前々から自分の作品をプロダクション化したかったんです。前の会社にいるときは、自分のチームを編成して作品を作っていましたが、やはりこういうのがイイなと思うところがありました。
塚原重義
というのも、完全に個人で制作していた頃、例えば『ウシガエル』はたった8分の作品なんですけど作るのに4ヶ月かかっています。それでは絶対仕事としては成立せず、趣味にしかならないんです。
塚原重義
もっとコンスタントに作品を作っていくにはどうしたらいいかとなると、スタッフと一緒に作品を作ることだと考えました。だからといって普通のアニメ会社に入ろうとは思いませんでした。
塚原重義
そうなるともう自分で会社を作るしかないなということで、スタジオを立ち上げることになりました。
すなふえ
いや~いい話だね(笑)
UG-K
スタジオ化したことで作品を分業できるようになったことが良かった点と伺いましたが、逆に苦労した点はありますか?
すなふえ
まだプロダクション化が完成していないってことですかね。
塚原重義
とりあえず場所ができてそこを維持することはできる段階になりました。スタッフを集めるのがこれからという感じです。
塚原重義
最初の1年はゴールは見えていたんですが、そこまでの道程が手探りといった感じで計画性がなく、2人ともフリーみたいな感じで仕事をばらばらにやっていました。
塚原重義
今年明けてからようやく組織的にオリジナル作品を作っていこうと流れになり始めた段階です。
すなふえ
僕と塚原さんとでは作風が全然違うので共同で作業することがなく、これまで一つの場所でフリーの人が集まってそれぞれの仕事をしている感じでした。
そこである程度の人数できちっと作る体制を目指しています。
そこである程度の人数できちっと作る体制を目指しています。
<製作環境・製作体制>
製作体制は塚原氏のラインとすなふえ氏のラインを軸に活動しており、塚原氏は本格的な映像の方に力を入れ、すなふえ氏はストーリーを中心とした効率的な映像作品の製作を目指している。それぞれ作品作りの方向性は異なっているものの、美術や演出などの協力を一方に依頼することで、互いに足りない部分を補っているという。UG-K
1つの作品を作るのにどれくらいの人数・期間で作られているのでしょうか?
塚原重義
最近は色々な請け仕事をするようになって作品毎に求められるモノも違うので製作期間とかもバラバラなんですけど、この前までやっていた仕事は1~2週間くらいで作っています。
塚原重義
NHK番組『星新一 ショートショート』で放映した作品は、2分半のアニメを3.5人くらいの体制で1月半かけて製作しました。
UG-K
現在はどのような仕事をされているのでしょうか?
塚原重義
今は可愛いい系のキャラクターものの仕事を請け負っています。それと同時進行でテレビ向けのオリジナル企画も2つ検討しています。
数人でチームを編成して週に1度会議を開いてシナリオが徐々にできつつある段階にいます。
数人でチームを編成して週に1度会議を開いてシナリオが徐々にできつつある段階にいます。
UG-K
その企画はずばりTVアニメでしょうか?
塚原重義
実はそこが凄い迷い所なんです。自分の作風はテレビ向きじゃないので。かなり理想の話になるんですけど、映画をやっていきたいと思ってます。
塚原重義
別に映画といってもハリウッドのような大規模公開みたいなものではなく、単館上映でも良いので草の根的な活動で作品を上映していけたら、ライブ感みたいなものを得られるんじゃないかと。
塚原重義
過去flash★bombとかに参加してそういった部分を味わった経験があるので、やっぱりそういう方向が面白いんじゃないかと思ってます。
UG-K
ご自身の作風以外にもテレビに対して懐疑的な点はあるのでしょうか?
塚原重義
テレビってどうしても垂れ流しなんですよね。過去にTV放映の作品を作ったとき、作って編集まで終わって、スタッフの間で試写会をしたんですけど、その時の印象とTVで放送されたときの印象が全然違うんですよ。
塚原重義
多分無意識のうちにTVを見るときの姿勢が違うんだと思います。
どうしても受け身になってしまい、作品に込めたものが自分自身でも読み取れなかったことがあったので、自分の作品はどうもテレビに向いてないなと感じるようになりました。
どうしても受け身になってしまい、作品に込めたものが自分自身でも読み取れなかったことがあったので、自分の作品はどうもテレビに向いてないなと感じるようになりました。
塚原重義
とは言いつつもテレビの影響力は未だ絶大なので迷い所ですね。でもそれで迷うのは贅沢かな…と思う自分もいます(笑)。
すなふえ
ゼイタクだよ(笑)
<DVD『海底ミカンの皮マイル』について>
UG-K
これまでFlashアニメの製作が中心でしたが『かくざ父さん』をはじめ、パペットアニメに路線変更した経緯についてお聞かせ下さい。
すなふえ
一言でいえば面倒くさかったと言うのがありますね(笑)。商業に通用する絵じゃないというのは、塚原さんや他のプロの人たちの絵を見て痛感した所がありました。
すなふえ
普通ならば『頑張って絵を描いてやる』という方向に向かうと思うんですけど面倒くさいので、なるべく絵を使わないでできるFlashアニメはないかなと探していた中で、コマ撮り的な手法を発見したと言ったところです。
UG-K
コマ撮りの撮影も結構大変そうに思えるのですが?
すなふえ
最小限の動きだけを撮っておいて、作品の中で使い回しているので大きな苦労はありません。
ストーリーも自分で書いているので、そこが作りやすい点かもしれません。あえて会話劇中心で物語を作っているので、今の作風が通用しているのかなと思ってます。
ストーリーも自分で書いているので、そこが作りやすい点かもしれません。あえて会話劇中心で物語を作っているので、今の作風が通用しているのかなと思ってます。
UG-K
コマ撮りには色々な素材を使った作品がありますが、なぜ今回ミカンの皮をキャラクターにしようと思ったのでしょうか?
すなふえ
普通の人形でもやろうと思えばできるんです。けれども芸術的な色彩が強まってしまうので、お笑いなど自分の本質に近いキャラを考えたときに、普通の食べ物を出した方が面白いんじゃないかということでミカンの皮にしてみました。
UG-K
潜水艦という戦争の道具の中でホームドラマを展開しようとした狙いは?
すなふえ
この作品は元々タイトルがまず初めに思い付いたんです。でも激しいアクションとかは作れないので、会話劇中心のお話でと考えたところ、家族モノが良いんじゃないかと言うことで、潜水艦の中で家族モノの物語を作ろうと思いました。
UG-K
製作の中で苦労した点はありますか?
すなふえ
ミカンを撮影するとき、ミカンの皮がすぐ干からびちゃうので、作り直さなきゃいけないんですけど、そっくりなのがなかなか作れなくて苦労しました。撮影中は20個以上のミカンを使いました。
<今後の活動について>
UG-K
今後の活動についてお聞かせ下さい
すなふえ
絵は外部の方にお願いして女子高生向けの猫のキャラクターの物語の脚本と演出を担当しています。10月くらいに発表される予定です。
すなふえ
もう1つは鉄道を使った塚原さんのアニメ企画がありますが、こちらも脚本/演出を担当しています。
塚原重義
弥栄堂フィルムとしては、MadBarbariansさんというキャラクターデザインユニットがデザインした『うんこさん』の映像制作を手掛けています。
すなふえさんと坂本頼光さんが脚本を担当していますが、お話の内容としてはかなりすなふえ色が強い作品です。
すなふえさんと坂本頼光さんが脚本を担当していますが、お話の内容としてはかなりすなふえ色が強い作品です。
塚原重義
声も坂本頼光さん一人が担当しており、かくざ父さん的な雰囲気が感じられると思います。各メディアで注目を浴びている作品ですのでぜひ見て下さい。
UG-K
今後の活躍を期待しています。ありがとうございました。
塚原重義
ありがとうございました。
すなふえ
ありがとうございましたー
・弥栄堂