2018年 9月15日(土)、9月16日(日)の2日間に渡り、新宿「LOFT PLUS/ONE」でWeb上で話題のクリエイターによる新作上映イベント『FRENZ 2018』が開催された。今年で10回目を迎える本イベントは、回を重ねるごとに出展者だけでなく参加者も増え続けており、チケットも発売後30分で完売となるほどの盛況ぶりを見せている。オンライン・オフラインを問わず有志によって開催されるものの中で、一度も休むことなく10年近くも続けてきたイベントというのは『FRENZ』以外に聞いたことがない。そんな熱狂ぶりを維持することができる原動力は一体どこにあるだろうか?
前回に引き続き、今回は二日目深夜の部に登壇された出展者のコメントの概要を上映作品とともに紹介しよう。(敬称略)
■FRENZ 2018 会場限定ビール販促動画(二日目深夜の部) (olo)
■FRENZ 2018 二日目深夜の部オープニング -REGATHER-
『一日目昼の部のオープニングを制作したyama_koさんが、初回のOPオマージュを作るというのを聞いたので自分もやるしかないなと。懐かしさを感じてもらえたら良いかなと思います。』(ヤス)
【深夜の部 第一部】
◆LOVER =) SWEETS
『久しぶりに可愛さ全開で行きました。今回別の作品を出そうかと思ったんですが、長尺でFRENZには出せないと思っていた時に、聞き直した曲でパッと頭の中に浮かんだものになります。』(fla3)
◆cafe au lait
『今までの二人の思い出のものとかを登場させて1つの街を作るようにイメージして作ってみました。タイトルは制作が全部終わったあとに決まったんですが、カフェオレというのはコーヒーとミルクの割合が人によっていろいろ好みがあると思うのですが、僕らの制作も一つの作品に対して毎回映像や曲の度合いが一番良いところを考えながら作っています。そういった思いを込めてこのタイトルにしました。』(Firstar)
◆【全部ドラム】最終鬼畜妹フランドール・S
『せっかくFRENZに出るならいつもと違うことにチャレンジしようと思って作りました。今後はMotionGraphicsやMVの方面を作ってみたいなと思います。』(大城)
◆僕はそれでも心の中に少女を飼う。
『1時間で描くワンドロというのがありまして、たまたまその練習をしていた時に閃いたのがきっかけです。もともとフィルムのような作品を一回やってみたいと思っていて、運良く今回の閃きと合わさってこの作品を作ろうかなと思いました。』(Suya)
◆till the dawn(till the dawn)
◆猿でもわかる!関西弁講座
『本当はコンセプトとしてはNHKとかでやっている外国語講座とか胡散臭いセミナーを狙ってました。ありふれた日常の中にある非日常というのがすごく好きで、普段絶対1回は見たことがあるものなのに強烈な違和感があるというのを感じてもらえたらいいかなと思って作りました。』(G.U.M)
◆ラムネ
『去年のFRENZにはじめてきたら動画がすごく面白くて、動画をやったこともないのに来年は絶対に出るって無理やり引きずり込んで今ここにいます。』(ゆう)
『もともと知り合いで一緒にFRENZに来たんですけど、すごいやる気があってストーリーも全部考えて頂いて作らせてもらいました。』(ななまち)
◆TeaTime
『寝る前に見たらいい夢が見れるような癒やされる作品がほしいなと思って作りました。いつか一緒に作品作りをする人ができたらいいなと思います。』(レイにー)
◆ぶきみと新宿L0FT/PLUS ONE
『基本的に2分前後のショートストーリー系のVtuberを作ってます。今後もこのキャラクターのストーリーをどんどん作っていきたいと思ってます。』(ぶき)
【深夜の部 第二部】
◆osmosis
『皆さんがビームを望んでいることは知っているのですが、それはソレとして…。以前xarvaさんの楽曲「Vorota」の動画を作ったことがあり、ホラー系を作ろうとしたんですけど間違えてコミカルになっちゃいました。でも違うんだということを自分の中で解消したかったので今回の作品を作りました。』(iimo)
◆Anger Management
『どの形でもこれが私の怒りだといえば、それが怒りの表現になるので、いろいろな形を作ってそれを色付けしたりしました。』(Clone Film)
◆しろくまNRF(ひでびん)
◆TOKYO MACHINE(松岡 渓)
◆TEN
『パンフレットに乗せてますが、コメントのURLは「FRENZのオフレポ」のページになっています。今年のレポートもここに掲載する予定です。』(福島 つばさ)
◆先輩バーチャルYouTuberと主張する自称・半人半鬼の妖チューバー(?)
『ラストの後にどうなったのかは口止めされています。今後したいことがあるようなのですが、本人が連れ去られてしまったので……そんな世界観でやっていきたいと思います。』(ハヤダカ)
【深夜の部 第三部】
◆君のプレイリストに僕を加えてよ(どるせら)
◆帝王切開
『一時停止とかしないとわかりませんが、ちゃんと解けるように作っています。謎を作るサークルに入っていて謎ばっかり作っているので、思考が謎に寄っていました。そんな謎が解けない理不尽性を逆手に取って、解けない謎を作ってやろうということでこの動画を制作しました。』(一隅)
『100問謎を作るって言われた時に、謎を作りすぎて頭おかしくなっちゃったのかなと思いました(笑) 前回も一緒に動画を作ったときは、自分の力不足で完成までに3年くらい時間がかかってしまいましたが、今回は作品タイトルのように1時間位でデモができて良いペースで作曲できました。』(迂闊)
◆NexTop
『大学で映像を専攻していますが、個人の作品として映像を作るのは初めてで、わからないことも多くて大変だと感じました。今後もいろいろ勉強していって、今後の作品に活かせていけたらいいなと思います。』(TENDA)
◆キティ『自分の気に入った曲で映像を作ってますが、今回はこの曲で作らせていただきました。自分でイメージを膨らませて、自分に足りないところはネットなどの情報で補完して映像化しました。』(冬もぐら)
◆A FUTURE MEOWS
『社会人でなかなか時間が取れない中、今年は10回目のFRENZということで頑張って出すことにしました。』(TOYCAT)
『今日会場で初めてフルバージョンを見ました。世の中のカワイイを作っているおじさんは凄いなと(笑)』(mustie=DC)
◆体重150kgのデブニートがドイツに亡命してみた
『今年で10回目を迎えたので何か新しいことをしようと思ったんですけどやり残したことがあって、学生時代にドイツに行く動画を途中で放置していた映像を今回まとめました。ドイツに行った理由がもう1つあって、当時ドイツ人の映像作家の先生のところに修行という名目で行ったのですが、ベルリンはニューヨークみたいなアーティストが集まる場所になっていて、フリーランスの方にはオススメです。』(ひわいさん)
◆宵のクオリア
『処方された薬を飲んだことで世界が変わったくらい改善した一方で、感情が湧かなくなって絵を描きたいと思わなくなってしまいました。でも1~2年前にFRENZに出させていただいたことですごく気持ちが動いたので、嬉しかったことやいろんな気持ちを残したくて映像にしました。』(***)
◆LOVE FRAME
『前回漫画の映像を流したんですけど、映像との違いはコマがあるかないかで、漫画はコマの大小で時間や空間の広がりを表現できるのですが、注釈が入るようなコマの外側のスペースを活用できないかと思い、コマの外の広がりを男女の距離感に捉えて、今回の作品を作りました。』(一番くじ)
【深夜の部 第四部】
◆回る秋うさぎ
『ハムさんから曲を頂いた時、僕じゃ絶対思い浮かばないアレンジになったので、ハムさんと組んだからこそ調和が取れた作品が作れたと思いました。普通映像って曲を頂いてから作っていくのですが、今回は映像を途中で渡したらハムさんから「こういうのはどうでしょう」と音を返してもうことを繰り返して重奏的に作れたのも面白かったです。』(ngkz_)
『普段音楽だけを作っている身なので、映像の方と一緒に作業をする機会が少ないので、随時やり取りしながら作ったからこそできたモノなのかなと思いました。音と映像のアイデアを互いに重ねていくことで自分にはない引き出しを掘り起こしてくれたり良い経験になりました。』(ハム)
◆サクラノ後夜 Music Video
『きくおさんのVOCALOID曲がずっと好きで、映像をつけたものをきくおさんにお見せしたらものすごい素敵だと言ってもらえました。楽曲としては、この歌の前に「サクラノ前夜」というナノウさんの曲がありまして、そのアンサーソングとしてきくおさんが作られたものになります。物語の構想としては、傷だらけの女の子が成長して約束通り戻ってきて、それを見た男の子が傷ついている女の子を見て歪んだ愛着に目覚めてしまうという話です。
またこのお話には2つテーマがあって、1つは純粋な人より、苦しみ抜いて生きてきた人の方が違う輝きを放っていて、それに親近感が湧いて惹かれていく人間の性みたいなものがあることです。もう1つは、そういう人を見て自分が救ってあげたいと思う感情は、善意なのか下心なのか? そんな表裏一体の自己の感情によるせめぎあいは誰もが持っているというところを表現しました。』(eau.)
◆釈迦の左手
『作品を作るにあたって“表現”と“技術”の2つポイントがあって、作品を作ることが冒険だとすると、“表現”というのは目的地であって、“技術”というのはそこにたどり着くための手段なんです。毎回作風を変えてたのですが、ちょっとまだ技術力がないと思ったので、技術力を貯めるために今回は今までやってきたことをやりました。』(84yen)
◆王と仕立て屋
『2012年に「月は無慈悲な寄席の女王」を公開したのですが、キャラクタは同じでテクノを使って文字でやるというのを作って来ました。10年目だからとかではなく単純に時間がなかったのが理由ですが、FRENZの1回目で作ったキャラクターを今回使っています。
「月は無慈悲な寄席の女王」は落語を意識して作った作品なのですが、今回はあまり落語の枠には沿ってなく、どちらかというとショートコントを意識して作りました。映像作品なんですけど、裸の王様と仕立て屋を実際に描いてしまうと映像として成り立たなくなってしまうので、叙述トリックを使っています。』(機能美p)
こうして二日間に渡って熱狂の渦を巻き起こしたイベントは閉幕を迎えた。最後にイベントを終えた主催の前田地生氏に今回のイベントの感想とこれからのイベントのあり方についてお話を伺った。
今回のFRENZを終えた感想をひと言お願いします。
毎年FRENZのために1年を過ごしているので、毎度終わった後は抜け殻のようになってしまいます。
FRENZ用に最適化してある上映プレーヤーや上映マシン、そして100人以上の作品と情報を管理するオンラインシステム、そしてサーバーまで、全てをスタッフの自己流で模索しながら毎年最適化と更新をし続け、進化を続けています。
最初はスタッフからお声かけをする招待出展と、自分で応募する公募出展とがありましたが、今は公募のみにしています。
イベントコンセプトも一部文章を調整してはいますが、根本は何も変えず同じ物を掲載しています。
これだけは毎年変わりませんね。性格なので仕方ありません。
FRENZは厳密には固定スタッフというのはいなくて、毎年新たに実行委員会を組織して開催を決定し進めています。
その気持ちを、開催されるかわからない”次”に持ち越さなようにして欲しいですね(笑)。
イベントの最後に来年は会場が変わるかもしれないことが告知されましたが、会場を変えようと思ったキッカケは何でしょうか?
映像上映イベントは、出展者と観客どちらか一方が欠けても成り立つものではない。
『FRENZ』に対する主催の前田地生氏や運営メンバーの熱意ももちろんだが、出展者と観客という両輪がそろうからこそイベントは動き出すものであり、双方が同じ会場で映像を体験することによる共感が燃料となって、さらに創作意欲やファン心理を加速させていくのだろう。
また出展者からは、イベントに出ようとしたキッカケとして以前観客として参加したという声がよく聞かれる。事実今年の出展者のうちなんと3割が初参加だという。
上映された作品によって創作力を刺激された観客が未来の出展者になるだけでなく、音楽制作者やイラストレーターなどいろいろなジャンルのクリエイターによる交流が新たな挑戦を生みだすクリエイティビティあふれる場となっていることが、今日まで『FRENZ』を続けてこれた原動力となっているのかもしれない。
そんなことを感じさせる『FRENZ 2018』でした。今回ご紹介したコメントはごく一部であり、会場ではたくさんの話題で盛り上がっていた。気になる方はぜひ来年のFRENZへの参加を検討してみてはいかがでしょうか。