2006年7月15日、東京田町にあるARK Studio Cube 326にて「映夜祭’06 (エイヤッサ’06)」が開催された。今年で3回目を迎えるこのイベントは、Flash作品の上映を酒の肴としてオールナイトで酒と雑談を楽しむFlash上映&トークイベントである。主催、司会者、スタッフのほとんどがFlashクリエイターで構成されているため、まさにFlash好きによるFlash好きのためのイベントとなっている。Flash上映イベント「slashup★02」が同日に開催されていることもあり、slashup★02の2次会として会場には多くの観客が訪れる賑わいを見せた。

会場では、夜店のごとくFlashクリエイターがデザインした各種オリジナルグッズが販売されている。また主催者/司会であるまっつん氏の登場では、昨年の赤フン一丁よりさらに露出度をアップさせた格好となり、まさにお祭りといった雰囲気を演出している。

本イベントは他のFlash上映イベントとは異なり、新作のほかにもリクエスト作品としてネット上で過去に公開されている作品が上映される。これまでパソコン上で見ていた時とは違った感動が得られるだろう。また休憩時間が比較的長めに取られているため、今見た作品について談笑したり飲み食いしたり、よりフランクに楽しむことができる。隣で飲んでいた人が、今上映されたFlash作品の制作者であったりすることも驚くようなことではない。それほどFlashクリエイターとの距離感が近いイベントであることも一つの特色だ。

上映作品の特徴としては、Flashクリエイターをモチーフとしたキャラクタやネット上の話題を題材とした作品が比較的多く、前提知識として予め把握しておかなければならない情報があるものの、Flash好きな人であればほとんど知っている内容であり、これらを知っていることでさらに楽しむことのできるラインナップである。また複数のFlashクリエイターによるコラボレーション作品が印象的だ。これまで見たことのない異色タッグによる新作や上映後の壇上インタビューは、Flashクリエイターのこれまで見えなかった新たな一面を発見できるだろう。

また上映形式にも他のFlash上映イベントにはない特色がある。一つは過去作品のW同時上映である。インターネット上ではオリジナル作品を一部改変したり、インスパイアしたFlash作品が数多く存在する。それらの作品を同時に上映することにより、これまで気づかなかった違いが一目でわかり、新たな面白さを発見することができるわけだ。さらに、ネットラジオで会場の雰囲気やプレゼント企画などを放送したり、会場で上映された作品の一部をネット上でリアルタイムに公開している。イベントに参加できなかった人たちへのフォローが手厚いのも、Flash上映イベントとしては目新しいポイントである。



本イベントの主催者であるまっつん氏と運営統括スタッフのk_氏に今回の所感と今後の展望について伺ったインタビューをお届けする。

◆ 本イベントの趣旨・特色についてお聞かせ下さい。

まっつん「『Flash作品を酒の肴にしつつ、みんなで談笑を行うスペースの提供』というのが第一ですね。作品を鑑賞するのがまずありき、というワケではなく、作品を見た後にその作品について語りあえる”空間”を提供することに重点を置いています。」

◆ 空間を提供ということで今年も様々な趣向が用意されていましたが、まずまっつんさんの最初の登場では、去年以上に過激な衣装(?)でした。これはどのように決められたのでしょうか?

まっつん「前年度の時点ですでに赤フンでの登場がありまして、そこからさらに露出度を高めるとなると一体どうしたものやら、という悩みはありましたね。
しかし今年3月に行われたFlashEXPO’06で中華丼プリンさんが作られた『マエバリ軍団』を目にしたとき、私自身も他スタッフも、『次はこれで』っていう意識が自然と芽生えたと感じています。
…もちろん、『俺、本当にコレやるの?』っていう葛藤はそれなりにありましたが(笑)」

k_「途中までまっつんはそれなりに抵抗はしてましたね。でも気付いたらどんどん段取り決まっていって決定していたという感じです。」

◆ 主催者側の立場から見て客層はどのように感じておりますか?

まっつん「年齢層に関してはやはり20代が中心ですね。男性と女性の比率はおおむね 男性7:3女性 くらいの割合だと感じました。」

◆ 女性客が年々増えてきているように感じられますが?

まっつん「かなり増えてきていると思います。去年も今年も『女性が行っても大丈夫かな?』という質問が掲示板でされていましたが、他の方の『大丈夫だよー』という返答を受けて、『じゃあ参加しますー』というやりとりがよく発生しています。」

k_「映夜祭に関しては来年は減るかもしれませんけども(苦笑)」

◆ イベントの性質上、時事ネタや2ちゃんねるで話題となった事件を題材とした作品が多かったですが、今年はさらに主催のまっつんさんやクリエイターをネタとした作品が見受けられ、よりコアな人たち向けのイベントになったような気がしましたが、その点はどのようにお考えでしょうか?

まっつん「イベントの発祥が2ちゃんねるのFlash板で、さらには私自身が2ちゃんねるのFlash職人であるということもありますので、必然的にネット上での時事ネタや2ちゃんねるネタの作品が中心になってしまうのは多少は仕方ないと考えています。
しかしそんなベースがありつつも、作品の比率としてはオリジナルの作品を提供していただく方も年々増えてきていますね。
ただ、いわゆる趣味レベルでFlashを作っている方にとっては、やはり時事ネタや2ちゃんねるネタの方が作りやすいという現実がありますので、結果的にイベント内では双方の作品が今後とも両立し続けるのではないかと思います。」

k_「運営サイドで『これは上映する、これは上映しない』といった制限を基本的にかけていない状態での公募制ですから、最終的には制作者様の作りたいもの次第といったところでしょうか。」

◆ なるほど。制作者の意思を最大限に尊重したイベントとも言えるわけですね。

まっつん「はい。」

◆ 企画についてですが、2つのFlash作品を同時上映するといったW上映がありました。他のオフラインイベントには見られない特色だと思いますが、これはどのような経緯で取り入れられることになったのでしょうか?

まっつん「背景としては去年、み~やさんの「Nightmare City」とカギさんの「Naname City」のW上映を行って、観客の反応が非常によかったというのがありますね。そこで今年もW上映はぜひやろうという話は早い段階でスタッフの間で決まってまして、あとはダブル上映が可能な作品をスタッフ間でどんどんリストアップを行った、という感じです。」

◆ もう一つの企画として、去年ではイベントに来ることのできない観客向けのネットラジオのコーナーがありましたが、今年はより一歩踏み込んだ形としてネットラジオでリアルタイムのDJ実況がありました。このDJ実況を取り入れたキッカケはどういうものでしょうか?

まっつん「深夜イベントという性質上、18歳未満の方はどうしてもイベントには参加できないので、その方々に何かしらフォローができないか、という思いからラジオ企画を考えました。」

k_「ただ、イベントと同時進行でのラジオ配信というのは自宅で行うラジオとは環境が大きく違うため、問題点は多々ありました。逐次改善を加えてこれからもやっていければと思っています。」

◆ 深夜イベントの性質として、3~4時になると眠くなり観客がイベントに参加することがなかなか難しくなると思うのですが、この時間帯に注意を払った点などはあるのでしょうか?

まっつん「作品の紹介順序で、深夜3~4時には目の覚めるような作品を上映するなどしてなるべく眠くならないように注意は払いました。また、深夜3~4時以降に歓談時間を大目に設けてしまうと歓談を行っていない観客の方々は眠くなってしまうという考えから、前半の歓談時間よりは少々短めに設定を行いました。」

◆ 今回のイベント開催において大変だったこと、反省点・課題などは?

まっつん「まず一番最大の反省点は、開始時間の大幅な遅れですね。この点は深く反省し、来年は時間通りにイベントをこなせるようスタッフ間で改善策を検討していきます。
また、先ほど話に上げましたラジオの不完全燃焼の点も、もっと企画をしっかり練って予定通りのスケジュールでこなせるよう今後とも努力していきます。
大変な点としては、主催もスタッフも作品を提供していただいた方も皆さん有志でやっているので、私生活とイベント業務との両立がみなさん苦労したと感じています。」

◆ イベントのラストでは早くも来年の開催を宣言していました。次回開催についての意気込みや展望などあれば一言お願いします。

まっつん「先ほど話にあげた失敗点や反省点はあれど、イベントの内容そのものに関しては今年も大成功であったと自負しています。
なので来年は今回あげた失敗点を埋める努力をしつつ、来年も今年同様、いやそれ以上の盛り上がりができればいいなと思います。」

k_「反省点、改善点ははっきり言ってかなり多いですが、来年開催が決まっているのでそれもポジティブな要素と捉えて、何よりも楽しめることをメインとした映夜祭の雰囲気はそのままでさらにイベントとして成熟していけたらと思います。」

◆ 来年も大いに盛り上がることを期待してます。本日はどうもありがとうございました。

まっつん「ありがとうございました!来年の映夜祭をお楽しみにー!!」

k_「ありがとうございました。また1年間じっくりやっていきますのでよろしくお願いいたします。」