【CloseUp Flash Reloaded】2007年 年末スペシャル対談


今年も残すところあと十日余りとなった。動画共有サービスの台頭によりUGCが一段と注目を浴びる一年となった。Flash界隈においてもFROGMAN氏やラレコ氏をはじめ、多くのFlashクリエイターが様々なメディアで活躍するようになった。そこで今回は、今年1年の総括として個人制作アニメ事情に詳しい真狩氏をお呼びして個人制作アニメを取り巻く様々なテーマについて対談を行った。

≪対談者プロフィール紹介≫

真狩祐志…アニメ情報サイトを始め様々なメディアへの情報提供や寄稿を行うジャーナリスト。JAWACONのコーディネーターを始め数々の個人製作アニメイベントに参画する等、幅広く活動を行っている。

UG-K…ここを読んでくれている人なら当然知っているCloseUp Flashを支える国内最大Flashニュースサイト「イイアクセス」管理人。今回の対談のまとめ役。




UG-K
それでは2007年の総括としてFlashや個人制作アニメに関する動きなどについて対談させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

真狩祐志
よろしくお願いします。


<FLASH衰退論について>

UG-K
今年に入ってニコニコ動画やYouTubeの躍進と対比してFlashが衰退したと言われるようになりました。これらのサービスも結局はFlash(Flash Video)なのですが、FlashがFlashであることが意識されなくなったのが、衰退したといわれる一因であるような気がします。

UG-K
つまり、今までFlashの優位性であった制作における敷居の低さやデータサイズの軽さなんかが、今では別のツールでも昔ほど問題にはならなくなってきていますよね。

UG-K
ニコニコ動画やYouTubeで配信されている作品もFlashだけでなく他の編集ソフト使っていることが珍しくない時代、動画に対するシームレス化が今の流れを占めている気がします。
このような状況なので最近「Flashであるメリットは?どうあるべきなの?」といった問題を意識するようになってるのですが…

真狩祐志
確かにFlashがFlashであることが意識されなくなったてのは大きいんですけど、やっぱりこれはプログラマーやディベロッパーなどの開発者側が意図した事でしかないんでしょうね。新機能毎に「こういう使い方が出来ますよデザイナーさん!」という。

真狩祐志
アニメ作るだけでしか使用しない人に自分はデザイナーって意識はないと思うんですけど。
2000年以降のFlashって既にアニメーション機能のみじゃなくなってますんで、ブロードバンドの普及率とかも含めてそのタイムラグが皮肉だなぁと思ってます。動画化も実は2003年から始まってたんですけどね。

UG-K
Flashがプラットフォーム戦略に舵を切ったことからこういう流れになって行くのはある意味自然の流れかもしれませんね。

真狩祐志
ちなみに「のまネコ事件」が起きた2005年にヤバいと思ったのは、Google Videoに映画の「Final Fantasy VII Advent Children」が無断で全編アップされて問題視された事です。その時期にはGoogle VideoがFlash Videoに対応してました。これは動画がヤバい。それからしたら「のまネコ事件」は全然問題じゃないと。
YouTubeも同年からサービスを開始してたわけですけど、去年からの利用者の圧倒的な多さは言わずもがなですね。

真狩祐志
またネットの流行としての視点からだと「Flashはインタラクティブも出来る」なんですけど、花形がアニメになっちゃってるんで「逃げ口上になってない?」とか勘ぐってみたくもなるんですが(笑)。同じくFlash Videoで配信しているニコニコ動画も立派なインタラクティブだし、ニコスクリプトでさらにゲーム性を持ち込んで来てますからますます面白い事になるかも知れませんよ。


UG-K
他との違いや優位性となるとやっぱインタラクティブですよね。
将来的には「Flashはアニメ“が”できる」ではなく「アニメ“も”できる」といった感じになりそうな気もします…

真狩祐志
でもユーザーがどう使おうと勝手なので、結局FlashをどうあるべきかっていうUG-Kさんの疑問は恐らくUG-Kさんがこうあって欲しいという主観の問題でしかないですね。
Flashが2003年からオリジナルの動画フォーマット「Flash Video」のサポートへと舵を切るようになった当初、ネットの流行として鑑みると注目したり問題視したりした人って誰もいなかった気がします。かといって言ったところで水を差す事にしかならないから誰も耳を貸さないとも思いますけど。

UG-K
もちろん主観の問題にしかならないことは重々承知なんですが、”Flash”ニュースサイトを運営している身としてはどこまでをFlashとして取り扱うのか悩みの種なんです。
全く別のツール使って出力フォーマットがFlashになってることもありますし、またその逆もあるわけですから。

真狩祐志
管理人さんの主観自体は問題にならない筈なんですが、他に比較対象を知らなかったり求めてない人とか探せない人がいるのが問題なんでしょうね。

真狩祐志
例えばイイ・アクセスを毎日見ててFlashが好きと言ってる人は、UG-Kさんの主観としてのFlashが好きなだけでしかないですよ恐らく。他も見てるって人もいるかも知れないですけど、主観が近かったらあんまり意味がないし、誰が一番先に拾うかの違いでしかないしで…。

UG-K
掲載順とかも一つの主観になりますからね。より広く一般の人に見てもらうというのはなかなか難しいことです。

真狩祐志
より広く一般の人に見てもらうってのも大変ですね。規模が大きくなるにつれて均質化するんで。例えばFlash職人からクリエイター、FlashアニメからWebアニメって呼び方変えちゃってるとこがあるんですけど(笑)、これも均質化の一端ですよね。
実質的に均質化するかどうかはさておいて、一方でアイデンティティが喪失したんじゃないかとか思ったりもするんですけど…。

UG-K
まあ確実に個性は失われますよね。より広く見てもらう上では大衆化というか、角のないものになってしまいますけど、その辺のパランスがしっかりしていればより良いものが生まれてくるだろうし、そうなっていくことを楽しみにしてます。

真狩祐志
動画化で新たな混乱も生じてるんですけど、動画の作品までWebアニメと呼んでしまうと「Flashで作ってないのにWebアニメって言うな!」って怒るクリエイターさんもいますので注意が必要です(笑)。


<動画共有サービスによる流行の変化>

UG-K
これまでWeb上の流行ってコンテンツが発信源となってましたが、最近はコンテンツそのものよりサービスが先行して牽引する傾向が見られます。
動画共有サービスなんかまさにその代表的な例で、これらのサービスができたおかげで過去の名作が掘り返されて再評価されたりしてます。

真狩祐志
Flashで作ったとか作ってないとかじゃなくてもっと広い視点ですね。個人的には画箱で懐かしいCMをごくたまに見てたりとかしてたんで広い需要はありそうな予感はしてましたけど。
ただ年代認識もあやふやになってるのもありますよね。

UG-K
サービスが今後の流行を左右する一方で制作者と視聴者という点から見ると今は圧倒的に視聴者の方が多いですよね。
今後の流行を見極めていくという点では、より広い視点を持った方がベターなわけですが、人気のあるサービスだけに視聴者が集まってしまうと、逆にそのサービスの中だけに閉じたローカルな視点になってしまうといったジレンマを感じます。

真狩祐志
実は私自身は「ニコニコ疲れ」なんです(笑)。「ニコニコ動画」がγになった時点で「あーもういいや」って思っちゃって。
「ニコニコ動画」のスピードがあまりにも早すぎてついてけない。

真狩祐志
でも同じネタを使いまわしても否定的な意見がつかないのが新鮮ですね。それはさておいても、流行ってるところは出来るだけ長く持続してて欲しいです。
次を熟成する計画がある場合は間が持たないから。
その仕掛けてるものが後々ヒットするかどうかは別ですし、自分の興味とは異なるところでのヒットを享受し難い人もいますけど、そのくらいアンテナを高くしとく方がいいのかも知れないですね。

UG-K
ニコニコは既に動画よりもコメントによるコミュニケーションが中心となっているので、使い回しの部分はあまり意識してないのかもしれませんね。そもそも最近のMADは使い回しによって生み出されてるし。
人気のあるところは大概人も情報も集まるので、アンテナ貼る先としてはニコニコは有効かと。でもやっぱり疲れてしまうリスクは大いにありますね(笑)

真狩祐志
それと個人的には自分で敢えて行動を起こさなくても勝手に話題になって定着してるものとか基本的にはもういいかな。だから記事を書く場合でも他に書く人が一定数を越えてるならもういいかなと思ってます。そうでない場合はどこよりも早くないといけなくなりますけど。もちろん記事にされる側は扱ってもらうとこが多い方が嬉しいですけどこれもある種の力学ですね。

UG-K
記事にされる側の期待と記事を書く側の期待、そして記事を見る側の期待。この微妙な三角関係は恐らくHP開設してる人全ての人が悩ましく感じてるのではないでしょうか…(笑)

真狩祐志
著作権に絡む話になっちゃうんですが、流行の観点からのFlashの場合だとJASRACに認めてもらう云々っていう話が正直良く分かりませんでした。
結局その周囲の人たちが自然に決めていったローカルルールでしかなかったですし、何よりも「二次創作」とか「同人」って意識がなかった。

真狩祐志
Web上の出来事のみで完結してたというか、Web上でつながりが出来ているようにみえた、視覚化されていた人達だけのカテゴリにしちゃってたという感じですかね。
とことん似ててもビッグサイトとかに集うのと各々でPCの前にいるのとの差が現れてるなと思って。最近は差がなくなってきたみたいですけど。


<ネットコンテンツのビジネス>

UG-K
著作権関連といえば、見送られる方向に落ち着いた非親告罪化とかコピーワンス問題とかネットに帯域制限かけるとか…とにかく規制する方向にしか動かないのは問題ですよね。もっとコンテンツを有効活用する方向に動いて欲しいモノですけど既得権益を守る力の方が現実社会ではまだまだ強いのでしょうね。
FlashをはじめWeb上のコンテンツも最近はリアルな方面に進出してますが、そのあたりがこれまでの流れを変えていく力になって欲しいものです。

真狩祐志
保護してもしなくても結局DVDとかのメディアを含めた物販頼みなのかっていうと身も蓋もないんですけど、稼げるかどうかは別にして確実なのがそっちしかないですからね。
Flashアニメの煽り方もそれのリスクの低さがウリって事でいいんだと思うんですけど、何かそこは敢えて曖昧にしてる感じがまだしますね。以前ほどではないにしても。

真狩祐志
Flashで本格的にアニメ作っちゃうと割りに合わないですけど、Flashで作らなくても結局関連グッズの販売になってきますから、いっそ「後々のグッズ販売のプロモーションのつもりで作ってます」って明言する方がすがすがしいじゃないかなって。

UG-K
リスクの低さと共にコストの低さを煽っていることがありますが、コストは変わらないどころかかえって高くついてしまうこともあると思います。
コストを低くできるのはごく限られたクリエイターだけなので、それを一般的なFlashアニメの売りとしてしまうのは逆にリスクをも高めてしまいかねないかと。

真狩祐志
そうなんです。テレビアニメとして単価が下がっても個人で食えるレベルなんだけどWebでそれやったら単価的にみてもまだまだ食える状況にないんですね。

真狩祐志
特にフリーで活躍している人なら、1作品に集中出来るだけの月収でないと生活が不安でたまらないでしょう。常に数作品同時進行という状況なら別ですが。使ってる媒体が違うのにFlashを使っているって事で同義に見てるようになってるのはやっぱり変。

UG-K
結局のところネット上のコンテンツそのもので収益を得るのはまだまだ難しい時代なのかも。そもそもFlashアニメをはじめネットコンテンツは、ネット上だからこそ優位性があるのであって、それをリアルに持ち込むことは優位性を失うばかりでなく、逆に足かせとなっているんじゃないかなと思ったりもします。
ネット上だけで上手く回る流通システムがあるのが理想的かも。そういう点からも課金システムが確立されている携帯に期待してるんですけどね…

真狩祐志
それと、ネットとリアルの資金規模や損益分岐は異なるのにリアルに移行して成功しないと成功と認めないってのが何となくありますよね。話が戻ってしまうけど結局興行収入とか関連グッズが売れるか売れないかの話。対消費者の成功でしか消費者は流行を判断出来ないから仕方ないけど。

UG-K
消費者だけでなくクリエイターに対するスポンサーというか支援者も結局のトコロ成功したものにしか手を出さないですよね。
企業側から見れば当然なのかもしれないけど、やはり成功したものだけ掻い摘んでいくようなアプローチでは、いくら個人クリエイターの活動が注目を浴びてきていても結局近い将来萎んでしまいそうな気もします。


<今後の展開について>

真狩祐志
UG-Kさんが今後注目してるものってあります?

UG-K
注目というかFlashのトレンドに関してみると、これまで4年周期でFlashがブレイクスルーとなる出来事が起きています。
1997年にFlashがリリースされてWeb上に新たな要素をもたらしたのを皮切りに、4年後の2001年にブロードバンド化の波に乗ってFlashが大きく広まったワケで。さらに4年後の2005年にはJAWACONやのまネコをキッカケにFlashコンテンツがWeb上から一般社会へ進出を果たしました。

UG-K
じゃあその4年後の2009年には何が来るかというと、個人的には携帯への本格的進出があると考えています。今でもFlashの待受けなどはありますが、もっと重いFLVやAIRを活用したサービスなどが携帯で利用できるかと。その鍵を握るのが、現在携帯事業各社が進めているHSDPAやWiMAXなどのモバイルブロードバンド化があります。
2008年に順次全国展開されますので、翌年には恐らく日本全国でモバイルからブロードバンドが利用できるようになると思います。またそれに合わせてブロードバンド通信の定額料金制も検討されていることから、ちょうど2001年のブロードバンド化と同じような状況がモバイル環境で起きるのではないかと予想しています。

真狩祐志
おお!4年周期説ですか。携帯だとそろそろ出てきてますから2年後ってのは普及に関してならベストかも知れないですね。となるとアップルの動きは当然見とくとして、対極として個人的に見とくのはセカンドライフにしようかな。重量級として(笑)。

UG-K
セカンドライフはいろんな面で時期尚早だった気がします。

真狩祐志
実のところ3D空間は10年前とかでもやろうとして頓挫してたからいい加減どうにかなって欲しいんですけどね。どの道それも含めて携帯にも落とし込まれる未来なので、軽量とか重量って何なの?って話にもなって来ますが(笑)。
仮に100年後の事を思うとしても今でも十分初期ですから色んな事象の終末論の多さはサイクルの早さの証だなぁと改めて思います。

UG-K
ネットにおける技術革新とかスピードは確かに早いですからね。
セカンドライフのようなサービスももしかしたら5年後くらいには当たり前のようになっているかもしれませんし。今人気のあるサービスも次の新たなサービスが生まれるとあっという間に廃れてしまいそう…

真狩祐志
ブームと呼ばれる規模は様々あるんですけど、むしろブームと呼ばれない時期をどう過ごすかとか、どう乗り切るかも重要かも知れないですね。

UG-K
音楽や伝統工芸品などと同じく、作品が良いものであれば、後々にも残っていくと思うのですが、それを引き継ぐ人(=作り手)がいるかどうかってことも重要だと思います。
引き継いでいくべきかどうかは別として、ブームが去っても地道に活動している人がいてくれることを望むばかりです。


UG-K
真狩さんから見た来年以降の展望は?

真狩祐志
来年ですか。それよりも今年の事を全然話してないので端的に言うと、現在劇場公開中の山村浩二氏の「カフカ 田舎医者」がオタワ国際アニメーションフェスティバルでグランプリというのがあります。「頭山」でアヌシーとザグレブと広島はグランプリだったのであとはオタワだけでした。これで4大フェスティバル制覇になりましたね。もちろんFlashで作ってないですよ(笑)。

真狩祐志
Flashでしたらうるまでるび夫妻の「おしりかじり虫」になりますね。今まででも似たような事がありましたが、NHKの「みんなのうた」であるのとWebが出発点でないというのもあって、流行の観点からしてもFlashで制作した事がメインの話題にならないようです。先ほどお話した「Web上のつながりを視覚化したカテゴリに限定していた」という点も大いに作用してるように思います。

真狩祐志
また来年はFlashかどうかはさておいて、とりあえず今年のうちに消化し切れなかったいくつかの事がありますので、それがどうなるかというのがあります。そのくらいしか言えませんけど。
ただ、二次創作を作りやすくなった煽りで個人のオリジナル作品を目立たせるのが容易でなくなってますので心配です。
あと、4年周期説の話が出たついでなんですが北京オリンピックは楽しみです。それに伴ってHD配信がますます加速したりとかソフト面やハード面でも色々あると思いますから。




今回Flashだけでなくネット上のコンテンツにおける様々な話題や問題点を語ってみた。事実関係や誤認に基づく意見もあったかもしれないが、今後の参考になる何かを見つけていただければ幸いである。来年のCloseUp Flashもよろしくお願いします!