今年も様々なFLASHムービーが生まれ、それらの作品が各メディアに進出を果たすなど目覚ましい躍進を遂げた。そこで今回は、年末のスペシャル企画としてFLASH界隈に詳しいお二方をお呼びし、2006年のFLASHの動向について存分に語っていただいた。
≪対談者プロフィール紹介≫
かーず…2001年11月より本格始動して早5年のFLASH兼萌え系ニュースサイト「かーずSP」管理人。大のFLASH好きであり、それが高じて今回『かーずSP選 FLASH大全VOL.1』(インフォレスト刊)を出すほどである
Gilcrows…国内外のWebアニメーション、モーショングラフィックスを中心に紹介するニュースサイト「GilCrowsの映像技術研究所」管理人。最近では、映像作品だけでなく映像作家にもスポットを当てた記事を紹介している
UG-K…ここを読んでくれている人なら当然知っているCloseUp Flashを支える国内最大Flashニュースサイト「イイアクセス」管理人。今回の対談のまとめ役。
UG-K:今年はFlash界隈に取って大きな躍進となる年だったと思います。そこで、今年生まれた作品やコミュニティの動向などについてどのような一年であったか、Flashにお詳しいお二方の意見を伺わせていただこうと思います。よろしくお願いします。
かーず:よろしくお願いしますー
GilCrows:よろしくお願いします。
≪今年の話題作について1「DE JA VU」≫
UG-K:今年も数々の話題作が生まれたと思います。2ちゃんねるで話題になったものとしては「DE JA VU」があります。とある雑誌でも受賞をしましたが、その辺りについてはいかがでしょうか?
GilCrows:俺はどっちかっていうと、順当かな(笑)
どっちかというとですけど。
かーず:それはなに、これに対してオッケーということですか?
GilCrows:まあ、オッケーですね。反響ですけど、昨日あたりもニュース速報の板で、Flash関係のスレが2つぐらい立ったんですよ。
またFlashがどうこうとか、ああいうノリですよ。「Flashが最近あんまりない」とかいうのとか、
あと、もうひとつのスレは「最近なんか友達がFlashやたら勧めてくるんだよ~」みたいなスレだったんですけど(笑)
そんときにもこれ、貼られてましたよ。
UG-K:結構広く知られているんですね。
GilCrows:はてなブックマークも、こういうオリジナルのFlashではたぶん一番あるんじゃないかな。
四十いくつくらいあって。かなり反響あったんですよ。
うちのサイトで紹介したときも、かなり反響あったし。
かーず:でも俺この作品、Flashをいままで見てきた人が「あー」って笑うもので、新しく見にくる人が面白がるもんじゃないと思ってた。
GilCrows:でもなんかみんなけっこう反応みると、「あっ、あるある」みたいな感じの反応だったんで。
なんだかんだ言って、やっぱFlash見ている層ってあるんじゃないかな、っていう気はするんですよね。
だから、みんな「num1000」見てるし。
あれはもうみんな見てるし、そういう延長線上で、「あっ、こういうのあるある」っていう風に感じる人は、けっこう多いんじゃないかな。意外に。
そんだけ反響があったっていうことは。
GilCrows:意外に言われてるほど、MGの認知度は低くはないんじゃないか、
っていうようなところもありましたけどね。
かーず:結構評価高いんですよね。ビックリしたんですけど(笑)
GilCrows:なにげにやっぱり技術力あるから。
かーず:「オリジナリティがないんだよ」っていうのがネタだよね。
GilCrows:これあれですよね、最悪スレのネタをFlash化したっていう。
かーず:ああ、そうか。あの人最悪覗いてんな、とか(笑)
GilCrows:覗いてますよ。
かーず:あっ、そうなんですか。
GilCrows:でもなんか、最悪どうですか、とかって俺聞かれてたりとか。
かーず:へえー。メールかなんかで?
GilCrows:メールっていうか、会った人とかに最悪どうですか?みたいな感じで。
なんで俺イコール最悪なんだよ(笑)
かーず:デフォルトで(笑)
GilCrows:前も、artistgoods.comの真狩くんにも、いきなり「最悪どうですか」って(笑)
ALL:(笑)
GilCrows:どうですかって言われても、どうなんだ(笑)
かーず:たまにサイトのネタで知ってるからじゃないの。
GilCrows:それはありますけどね。でも最近してないっていうか、もうなくなっちゃったから。
≪今年の話題作について2「吉野の姫」≫
UG-K:アニメ系というかストーリーものでいうと今年は「吉野の姫」が数々のコンテストで受賞を重ねましたね。
かーず:ネットで公開されたのってずいぶん後になってからじゃん。作られたのは去年?
GilCrows:一応公開したの今年ですよ。
かーず:新木場の所で上映会とかあって、そう言うところではやったんだけど、ただネットでアップされるとは思わなかったんで、だから見に行ったんですけどね。
かーず:絵のクオリティ的にはもう全然問題ないですよね。
GilCrows:っていうかもう普通のアニメじゃないですか(笑)
かーず:普通のアニメーションなんですよねこれ結局。
GilCrows:これどうやって作っているのか全然わかんないんですけど。
かーず:ああそれは、セルアニメとかそういうこと? 1コマ1コマ書いてるとか。
GilCrows:普通に書いてんのかなーとか。ベクターアニメなら見ればわかるんですけど、ラスターアニメだとどこからどこまでどういう感じで作ってるのかなーとか。
あとAfterEffectsあるじゃないですか。あれこの作品も使っているらしいんですけど、どういう風に使っているのか全然わからないです。
かーず:あ、Flash作られるんですか?
GilCrows:いや、ずいぶん昔に…
かーず:触れてはいけない過去を触れてしまった感があるのかな俺は(笑)
GilCrows:黒歴史ってことで(笑)
かーず:Gilのだぜ~ってアップしたら叩かれるような「オマエあんな偉そうなこと言ってこれかよ」的なヤツなんですか?
それともちゃんとしたやつですか?
GilCrows:イヤ全然たいしたものではないんで。
かーず:みんなそう言うんだよね(笑)
UG-K:でもまあこの作品は受賞されてもおかしくないクオリティでしたよね。
GilCrows:これは文句なしじゃないですか。
かーず:ストーリー的にはあれだよね、普通に起承転結があってビックリするようなものではないよね。
GilCrows:でもどっちかって言うとFLASHアニメって驚くべきストーリーってのが少なめじゃないですか? 普通の話が多いってのは、作る労力とか時間とか必要じゃないですか、尺とか。
かーず:ああ
GilCrows:すると結構大変になるし、ショートアニメで落とすって言うのは結構脚本力が必要で。それで蛙男さんが結構評価されていると思うんですけど。数分間でオチに落とすあの技術ってやっぱり抜きんでてるし。
かーず:才能だよね。だからなおさら評価されるのかな。
GilCrows:あとストーリーじゃなきゃやわらか戦車みたいな歌モノになる。でも最近はまあストーリー系だけどでもやっぱり見る人を引き込む力があるのは歌ですよね。
かーず:カレーパンのころからそうだったですよね。カレーパンは他の人が作曲したやつだけども耳に妙に残る感じでMAD曲じゃなくて何て言ってらいいのかな…
GilCrows:電波ソング。
かーず:ああそれだ。いいこと言ったね(笑)
で、結局その両極端のFLASHが共に大躍進した年でですよね。
GilCrows:そうですよね。だからほんとストーリーと歌モノがはやりましたね。
≪今年の話題作について3「空想少女」≫
UG-K:アート系で言うとえぬさんの「空想少女」が注目を集めましたね。
GilCrows:俺正直この作品が出る前のえぬさんの作品は全然知らなかったんですけど、
初めてラインナップに出たときに知って。へぇーと思って。
かーず:怖いサイトだなーと思った?
GilCrows:(笑)でもホント知らなかったですよ俺。
かーず:インパクトがあってサイトで紹介したときにすっげー覚えていて、だけど全然新作を作らない人なんで、忘れてたことにガーンと名前が来て。実際トリだったのかな?これたしか。
GilCrows:いやトリの前ですね。まあ正直一番インパクトあったのは、これだと思いますよ。
かーず:やっぱりイベントで一番インパクトありましたね。あとぴろぴとさんの作品とか。
GilCrows:(笑)
かーず;どうですかえぬさんの作品は評価的に。
UG-K:やっぱ独特の世界観がすごいですよね。
GilCrows:以前話聞いたときに、あれっFLASHBACKってあるじゃないですか。
あれにインスパイアされて作ったらしいですよ。
かーず:この作品?
GilCrows:ええ。この作品紹介した記事に「FLASHBACKに似てますね」とか書いてたから「そうなんですよ」って言われて。
かーず:ガッツポーズでしょ?
GilCrows:(笑) もともとあーいうチェコアニメ見たいのが好きなんらしいですよ。
かーず:わりと前衛的なのが好きだったりするんですかね。
GilCrows:ええ。でもうちはロシアとかあっちの方はそう言うのがあんまり紹介してないんですよね。
かーず:なんかばるぼらさんとかエルエルさんが好きそうですけどね。
GilCrows:俺あっち方面すごい苦手なんで紹介できる人がちょっと羨ましいですね。
かーず:頭良さそうな感じする(笑
UG-K:アート系って感じですからね。海外はアート系多いっすよねやっぱ。
かーず:日本に伝わってくるのがそればっかなのかな?
GilCrows:ロシアはアート系がほとんどですよね。なんかロシアのFLASH紹介サイトとか見るとなんか
全部なんか頭イッちゃってるような…(笑)
かーず:でもこういうアート系を作る人は日本では数少なくて、そう言う意味で評価されたっていうか。
GilCrows:そう言う人はホントぴろぴとさんとえぬさんくらいですよね。
かーず:日本でそういうタッチの作品作る人他にいないですよね。
GilCrows:あとslashup★02に出たスノコさんも結構海外のコンクールとか出展してますよね。
かーず:でもこういうアート系ってすごくコメントに困るんですよね。
GilCrows:困りますよね~
かーず:凄いとしか書けないじゃないですか。「強烈なインパクト」とかそういう当たり前の単語しかないのかって(笑)。他にもっと気の利いたことが言えればいいんだけど…
≪今年の話題作について4「MUSIC FIGHTER EpisodeⅡ Distiny」≫
UG-K:「MUSIC FIGHTER EPISODEⅡ DESTINY」はもうかーずさんのお気に入りで(笑)
かーず:あ、わかる?(笑)slashup02の上映前のコメントでスク水にしたのは俺のせいみたいなこと言ってましたけど、冗談で言ったのかなと思ったらアレほんとにしてあって(笑)
かーず:一応続編モノということで、この人は今回ストーリーアニメでもあってPVのように音楽に合わせたところもありますよね。
UG-K:個人的には1の方が好きですけどね。
かーず:1は1でまとまってた感がありますよね。あのままおわっても問題ないというか、ハッピーエンドじゃないけどね。
GilCrows:そうですよね。俺はそれちょっと気になったんですけどね。
かーず:そういう落とし方もありかなと思って。それで2が始まるんだなと思って。
かーず:この人絵の個性が強すぎて受け入れられるのかなって心配がボクあるんですけど、こうやって賞取ってるところを見ると大丈夫なんでしょうね。
かーず:アニメ系の中でもバリバリじゃないですか。クセの強い絵柄なんで。
GilCrows:でも確かにそうですよねー
UG-K:でもまあたけはらさんに通じるような頭身の低いキャラが特徴的ですよね。
GilCrows:頭身低いから動かしやすいってのもあるし、3D系ってのもありますよね。
かーず:「まんとら」で一番最初にこの人の作品が紹介されましたよね。
GilCrows:「Magical Forest Academy」ですね。
かーず:水樹奈々ちゃんがアフレコしてて驚異的にビックリしてたなー
GilCrows:(笑)
かーず:いやこれホント凄いことなんだよ。あの当時で、フラッシュってやわらか戦車とか出てなかった頃にテレビのアニメに出てきたのは驚異的だったね。
≪今年の話題作について「その他」≫
UG-K:あとは、時事ネタとか一発ネタなど笑いをとる作品もいくつか見られましたが。
GilCrows:話題性的には抜群でしたよね。
かーず:Flashニュースサイト以外にも広まってたっていうのが。
GilCrows:ていうか、どっちかっていうとニュースサイト外の方の盛り上がりの方が大きかった感じが。
なんか全然Flashとか見てない人も、これ面白いよって俺言われたんで。
かーず:言われたんだ?(笑)
俺にそれ言う?みたいな感じじゃないですかね。
UG-K:やっぱり、こういうネタものがやっぱり注目を集めますよね。
かーず:普遍性があるというか広がりはあるよね、ちゃんと。
かーず:そういう意味で、Flash見る人はFlash好きだけ、みたいになってるって言われるじゃない。
GilCrows:はい。
かーず:今年もなんか、衰退うんぬんって話、やっぱ、それじゃないですか。
GilCrows:それですよね、突き詰めていけば結局そういうことになっちゃう。
かーず:それはもう、さんざん言われてることで、俺もばるぼらさんとの対談の時話したし、みたいな感じなんですけど。
かーず:今までFlashってさ、Flashを見ない層も見てたじゃない。そういうのはなくなってきた。
かーず:だから、Flash好きは残ったんですね。
おもしろモノ好きは、別のほう行っちゃったっていう認識があって。
俺のニュースサイトやってる感触では。
GilCrows:俺的には、Flashばっか紹介してると、結局Flashしか見ない人しか集まってこないなと思ったんで、
別のものを、YouTubeとか、そういうのを紹介するようにしたんですよね。
かーず:でもそれで例えばYouTubeがあって、Flashがあったときに、YouTube見る人はYouTubeしかクリックしないんじゃないの?
GilCrows:そうですね。だから、なるべく見てもらえるように、画像とかあるじゃないですか、紹介するときに、
いろんな人に見てもらえやすいようにっていうのはあるんですけど、一応は。
でもなかなかでも難しいですよね。
かーず:あとは、アニパロですか。
GilCrows:アニパロはもう少なくなっちゃいましたね。
かーず:数的には減ったのかな。
GilCrows:減ってますよね。相当減ってるような感じするんですけど、俺的にはもう、YouTubeで元ネタ見れちゃうからいいかなって。
昔ってあれじゃないですか、動画ファイルなんて全然なかったじゃないですか。
かーず:なかったね。
GilCrows:オープニング見れないじゃないですか。だから例えば、ウテナのパロとか見て。
あんまりウテナとか見たことないけど、っていう感じでも入っていけるっていうような間口の広さがあったりとか。
2ちゃんねるパロディとかだと、アニメあんまり見てない人でも見るっていうのがありますよね。
UG-K:それはありますよね。
GilCrows:そういう人が昔は多かったけど、今はYouTubeで、そのまんま元ネタ見ちまえばそれで終わりかなっていうような雰囲気になっちゃった。
かーず:よっぽど面白くないと、加工しないと。
そういうことか。なるほどね。
GilCrows:だから俺もなんか紹介するときに、元ネタのリンク一緒に置くのは、ちょっと躊躇するときがある。
元ネタそのまま見ちゃっても、っていう。
うーん、なんかどうなのかなー、って思ったりするときもあるんですけど。
GilCrows:だから空耳とか、自分のアイデアとかでするものだったらまだ全然需要がありますね。
かーず:まあね、認めてもらえるっていうかね、がーっと広まって行きますけどね。
昔は空耳も多かったけど、今はさっぱりですよね。
(次回に続く)