【CloseUp Flash Reloaded】コミックとアニメの特徴を合わせ持つFLASHアニメ
FLASHで作るアニメには、ページをめくるコミックのように読み手のペースでストーリーを進められる特徴がありながらもコマ割りに縛られないアニメのような動きに対する自由度を持っている。また自分の選択によってストーリーを分岐させるなどインタラクティブな要素を含めることもできる。今回はそんなコミックやアニメ、さらにはゲーム的な特徴を合わせ持つFLASHアニメを紹介する。
■花山院ですが何か?
年収1千万以上の裕福層家庭の子息だけが入学を許されるというエリート養成私立校「聖ロリナス女学院」。そんな所に入学してしまった下流層出身の花山すみれが本当の家柄を隠しつつ、お金持ちの彼氏ゲットを目指すドタバタ学園コメディ。
舞台設定やオープニングなど既存アニメを意識した作りとなっているが、わかりやすい人間関係や各シーンで見せるギャグがテンポ良く、心地よく見ることのできる作品となっている。
「一般的なFlashよりもカット、作画を増やしてます。Flash特有な単調なトゥイーンにカメラワークを加え、常に画面をやかましく見せることで見てる方に単調感を与えないように配慮しています。」(月見堂さん)
「音」と「動き」のシンクロによって生み出される小気味よさが持ち味である本作品は第3話より、livedoorネットアニメ内で配信されていました。
・月見堂
■さっちゃんのきもち
幼馴染の高校生”さち”に淡い恋心を抱いている中学2年生の”アコ”。しかしさちが好きな相手は自分の姉、大学生の妙子だった。3人の恋模様を通して、相手を思いやる気持ちの大切さを伝えたちょっぴり切ない全4話の初恋物語。
さちの気持ちを知っているだけに上手く想いを伝えられないアコのもどかしい気持ちが作品中からあふれ出し、思わず感情移入してしまうストーリーなのだ。
「テーマは初恋です。やるからには恥ずかしくなるくらいストライクな王道にしようとかんがえておりました。ですので若干顔を赤くしながらご覧いただけると狙い通りであります。」(ちーむどらむすこ代表・小野よしきさん)
オマケゲームなど様々な趣向を取り入れている本作品だが、アテレコにプロの声優さんを起用されているのも特徴的である。
「アニメーションを作るに辺り、声をつけると言うのはある意味当然の行為だと考えております。
この作品は三角関係の話ですので、どうしようもなく好きになってしまう魅力を持った相手としてさっちゃん役に山口勝平さんを。そして恋のライバル、妙子ねえちゃん役には、絶対に勝てないと思わせる“ある意味最強”の井上喜久子さんを。そんな魅力溢れる相手に立ち向かう、けなげな女の子=中村有岐さん、というキャスティングでした。
皆さんに少しでも喜んでもらえるために、色々と趣向を凝らして頑張っております。」(同・小野よしきさん)
見た後に優しい気持ちになれる作品を数々作られているちーむどらむすこさんではラブコメ作品『ば~が~たいむ』も配信中だ。
夏らしい“明るく楽しく”を合言葉に製作されているようなのでこちらも是非ご覧頂きたい。
・ちーむどらむすこ
■Flashアニメ コンキチくん
ひょんなことから街に迷い込んでしまった一匹の子狐コンキチくん。小学4年生の活発な女の子あーちゃんと出会い家に招き入れられたことから始まる全12話予定のほのぼの系アニメ。
吹き出しや擬音などコミック的な要素を持ちつつも、オープニングやエンディングをフルアニメーションで構成したり、物語中にミニゲームを取り入れたりするなど意欲的な試みが行われている。
「このお話には、派手なアクションシーンや、小難しい言い回し、暗い過去を背負った登場人物がいるわけではありません。見ていただいたかたに、ほんのちょっとだけホンワカと和んでいただけたらなーと思っています。とりあえず、まずはオープニングだけでも見ていただきたいです。」(タカギマサユキさん)
今後コンキチ君がどんな活躍をするか楽しみである。
・猿電影
【FLASH BACK 200X】皆さんの一票で暮らしが変わる2006年7月【slashup★02】
夏だ!祭りだ!参院選だ!…というわけで、みなさん投票には行きましたでしょうか? 今回から18歳からも選挙権が与えられたということで、超高齢化社会を迎える日本とって若者の民意を伝えられる貴重な1票だと思うわけでございます。さて2006年の7月には、名称を新たにしたslashupが初のオフラインイベントを迎え、暑い夏をさらに熱くしていた時期です。そこで今回はオフラインイベント『slashup★02~Flash Summer Festival~』から注目の作品を紹介します。
■空想少女
古いフィルム映像のようなノイズや画面のゆれなどの細かい演出が光る摩訶不思議なアニメーション。夢中になって本を読みふける少女の空想が次々と具現化するといったインパクトのある世界観が繰り広げられます。
・花蟲
■ガラクタノカミサマ
み~や氏初のオリジナル作品であるSFファンタジーアクションアニメ。人々を理想郷に導くカミサマの声を聞き人々に伝える巫女とそのカミサマに抗う少年の関係や戦わねばならない因縁をバトルにあわせて描いてます。
・miyasuke.net
■MUSIC FIGHTER EPISODEⅡ DESTINY
音楽が禁止された世界で抵抗する3人が電波ジャックにより音楽を届けるMV風アニメーション。前作からの続編で「音楽は楽しむもの」をテーマにバトルの勝敗が決する展開となってます。
・tigo’s Factory
■魔女と森の精霊
森に住む”マリー”という女の子と森の精霊との交流を描いた物語。一見楽しそうな雰囲気の中に魔女狩りの背景をにおわせる所など“なつみSTEP”に通じる闇深い部分を感じさせるストーリーとなっています。
・こしあん堂
■ツクモヤマイ
何かから逃れようとしつつもで何かを追い求めている終始幻想的な世界が描かれています。コミカルなキャラに若干狂気を孕んだ写実的な背景などエジエレキさんの転換期ともいえる作品です。
・マタタビアソビ
【新連載】CloseUp Flash Reloaded:ウェブの枠を越えていくFLASHムービー
突然ですが新連載です。いや「新」というのは語弊がありますが、ちょうど10年前の今頃、MouRaというサイトでFlashクリエイターに着目した連載をしていました。残念ながら現在はWeb上から消えてしまいましたが、そろそろ時効と言えそうな頃合いですので、ここで再掲載させていただきます。
作品自体は『FLASH BACK 200X』で紹介されているのも多く、また現在は既に存在していない作品もいくつかあるのですが、普段とは違った切り口で解説してますので、可能な限り紹介していきたいと思います。
個人制作のFLASHムービーが熱い! これまでインターネット上で一部のファンの間でしか知られていなかったFLASH作品が、ネットやFLASHムービーにあまり触れたことのないユーザー層にまで広がりを持ち始めたのは大きな飛躍である。FLASHムービー自体がネット上で多く見られるようになったのは今から5年ほど前だが、このようなブームが起きたのは2006年に入ってからとなる。そんな今のブームの先駆けとなった2人のクリエイターが生み出した作品をご覧頂きたい。
■秘密結社鷹の爪
秘密兵器や怪人を生み出し世界征服を目論むベンチャー秘密結社「鷹の爪団」。団員の吉田君やレオナルド博士の勝手な行動に日々頭を悩ませつつも世界征服の野望を抱く総統に加え、彼らの野望を阻むために登場するが結構腹黒い一面も見せる正義の味方デラックスファイターなど個性的なキャラたちの日常を追った物語。
■古墳ギャルのコフィー
前方後円墳型の女子高生で探偵気質なコフィーとマンション建設など憂き目にあう四隅突出型墳丘墓のダニエル、天敵のドロシーや古墳少女たちの憧れの的のニントクなど学園の仲間たちがおりなす愛と友情と毒舌にあふれる学園ドラマ。
どちらもFROGMAN氏が2006年4月にスタートしたTVアニメ「THE FROGMAN SHOW」で放映されている作品である。これまでにない型破りなキャラクタが生み出すシュールさが人気の作品だ。FLASHムービーがTVに放送されること自体が大変な驚きをもって受け止められていたが、万人にウケるその面白さがTV放映という快挙を生み出したのだろう。TVの放映は先週に大団円を迎えたが、これまでにはないシリアスな展開を見せている。関西地区の最終回の放映は今週のため詳細は伏せさせていただくが、気になった方はぜひ見てもらいたい。
また個人的にオススメしたいのが、島根県出雲地方に暮らす極貧黒人ファミリー菅井家のドタバタコメディ「菅井君と家族石」。2004年から2005年にかけてネット上で話題を呼んだFLASHアニメであるが、秘密結社鷹の爪に登場するキャラの一部はこの作品からの出身であったりする。菅井一家の想定外の行動や会話は大きな笑いを誘うこと必至だ。
尚、秘密結社鷹の爪や古墳ギャルのコフィーのサンプル、菅井君と家族石のストーリーのいくつかは、蛙男商会のサイトで見ることができる。
■やわらか戦車
戦場で無類の弱さを誇り、猫にさらわれたりイタズラされたりという憂き目にあいながらも、常に生きのびることを考えながら退却を続ける武器を持たない不思議な“兵器”。この作品が作られるきっかけとなったのが戦争映画であり、「人の痛みを知れ」という奥深いテーマが隠されているのも興味深い。
■くわがたツマミ
元モデルのママと現役バリバリの昆虫のパパとの間に生まれたくわがた少女。何でも摘んじゃうという得意技を持っているが、唯一机の上の切手だけは摘めないというお茶目な一面もあるツマミちゃんが、昆虫としての習性に翻弄されながらも逞しく生きていく様子を描いたショートアニメ。
ラレコ氏の生み出す作品は、いずれも魅力のあるキャラクターが特徴的だ。またそのキャラクター性を最大限に引き出しているのがユーモラスあふれた歌である。特徴ある歌声やメロディに心を奪われがちになりそうだが、ここは歌詞にも注目したい。オープニングソングでは、普通あらすじなどで紹介される主人公の名前や性格、家族構成、得意なモノ、苦手なモノなどキャラの特徴が全て歌詞に込められている。はじめて見る人でもオープニングを鑑賞するだけで、作品の世界にスムーズに入り込んでいけるというスグレモノだ。ぜひ第1話のオープニングから見ていただきたい。
【ギャップが生み出すおもしろさ】
両氏の作品に共通している点はギャップから生み出されるおもしろさだ。古代の墓である古墳を今時の行動的なギャルとしている設定や世界征服を企んでいるにもかかわらず人情味あふれる鷹の爪団、兵器なのに柔らかく生き延びることだけを考えていて退却する戦車、人間とくわがたの間に生まれたハイブリッド生命体など、我々が通常持っているイメージを覆した発想をキャラ設定に取り入れたことがこれらの作品を面白くしている。
THE FROGMAN SHOWは既にDVDの発売が予定されているし、くわがたツマミは携帯ゲームにも進出している。FLASHの枠を越え、あらゆる方面に展開していくFROGMAN、ラレコ両氏のこれからの活躍に目が離せない。