【CloseUp Flash Reloaded】幻想的な世界観を持つアートアニメーション
Flashアニメーションというと主にエンターテイメント性を重視した娯楽作品が多いが、中には芸術性の高いレベルにあるイメージをFlashによって表現したアニメーション作品もある。アートアニメーションという言葉は厳密に定義されているわけではなく人それぞれによって認識は異なると思うが、今回紹介する作品からアートアニメーションの一端が垣間見えるのではないだろうか。
■空想少女
少女の空想が次々と具現化する摩訶不思議なアニメーション。夢中になって本を読みふける少女。そこに一匹のネズミが登場する。突如少女の頭から本に登場していた様々な生物や草木が連鎖的に現れていく… まず驚くのは、個性的かつ強烈な世界観。そしてディテールまで描き込まれた版画の様な質感の絵に強烈に引き込まれる。古いフィルム映像のようなノイズや画面のゆれなどの細かい演出も世界観をよりリアルなものにしている。そしてこれまでの展開の意味が明らかになる結末には、誰もが感嘆させられるであろう。
「テーマは、一言で言えば『ビックリ箱』です。とにかくすごいインパクトで見た人を驚かせたいという狙いがあったので、不思議な生き物が次々とテンポよく飛び出していくという演出を試みてみました。
それから、緻密な描き込みで圧倒させようという狙いもありました。一瞬見ただけでは全体を把握しきれないほどの情報量が画面内に溢れていると、それだけで見た人は圧倒されると思ったので。」(えぬ氏)
インパクト重視で絵で人を圧倒させたいということを常に考えているえぬ氏だが、アニメーションとしての映像作品を作ったのは今回が初挑戦だったという点にも驚かされた。
先月にはTV東京系「うぇぶたま」やNHK「デジタル・スタジアム」でも放映され高い評価を得ている。本作の他にも絵本の世界をそのままゲームにした「ポックのともだち」という作品もお勧めだ。
・花蟲 -Hanamushi-
■DOLL
前作『まーちゃんのりんご』の続編として位置づけられた、段々と腐っていく少女をイメージした作品。『まーちゃんのりんご』では、人形劇風のメルヘンチックなイメージを前面に出していたのとは対称的に、本作では写実的な映像を中心に描かれている。幻想的な雰囲気ながらもどこか背筋が凍る思いがするのは、前作で少女が辿った結末や本作の最後に表示される[dove]といった意味深なメッセージによるものかもしれない。今回の作品はどのように制作されたのだろうか? 制作者のぴとぴと氏に伺ってみた。
「実際にフランス人形さんを購入しその人形を使って制作しました。とっても高かったのですが良い顔をしてるので良かったです。」(ぴろぴと氏)
全体を捕えさせることなく抽象的な表現を組み合わせた独特の映像観は、見る者のイマジネーションに強く訴えかけているだけでなく、何度も繰り返し見てしまいたくなるような中毒性がある。そんな魅力にあふれている本作は、来月下旬よりフランスで開催されるクレルモンフェラン映画祭への出品が決定している。
現在新作を制作しているというぴろぴと氏のさらなる活躍を期待したい。
・ありさんとくらげさんがごっつんこ
【FLASH BACK 200X】降板騒動が熱盛な2007年10月【ラスト3回】
復帰にしろ降板のままにしろどちらにしても、もはや誰も幸せになれないような状況となってしまった某騒動ですが、どうにもならないのは5ch(旧2ch)も同じなような気がしてならない今日この頃です。
さて2007年10月は、誰もが知ってる名作の新シリーズがスタートしたり、新たなコラボが発表されたりとしていた作品をご紹介したいと思います。
■CATMAN SeriesIII
待望の新シリーズがスタートしました。「自由と孤独」をテーマに都会を駆け回る世界観を維持しながらも新たな動きやディテールを見せています。
・aoike.ca
■やわらかアトム
やわらか戦車と鉄腕アトムのコラボ企画によって生まれた新シリーズ第1弾。空も飛べるようになって何だか積極的に見えるアトムですが、退却精神は健在のようです。
【CloseUp Flash Reloaded】怪物が登場するFLASHストーリー
古来から怪物というと人の形をした、もしくは人が変化した架空の生物を指し、人間から忌み嫌われる存在であることが多い。しかし怪物といえど完全な存在ではなく、どこかに苦手なものや弱点がある。そこから親近感が生まれ、人間との交流により様々なドラマが生まれる。今回はそんなどこか不完全な怪物が登場する物語を紹介する。
■ハクシャクノテンシ
血を吸うことができない落ちこぼれの吸血鬼と自殺願望を持った天使の顛末を描いた武藤暁氏原作の物語をFlashアニメ化した作品。「箱庭演劇アニメーション」と位置づけられた本作は、朗読者の語りから始まり、幕や照明などを使った劇中劇による演出が取り入れられている。電柱や屋台ラーメンなど世界観を壊さない程度のチョットした演出なども見ていて楽しいが、お互い不完全な存在であるが故に惹かれあうところや、自己犠牲的な天使の行動がわかるラストなど、人間味あふれる姿に感動を受けた人も数多いのではないだろうか。
「世界観やキャラクターなど、原作を読んだだけでは得られない味付けをするのが私の役目でした。ストーリーと合わせてそこも楽しんでいただければ幸いです。」(nae氏)
本作品の他にも原作では、「マジョの物語」「死神のお仕事と天使のような彼女」「ハクシャクトテンシ」の3作が小説として公開されている。「箱庭演劇アニメーション」の第2弾が企画されているようであり多くのファンに続編が期待されている。
・製作:nae (N-GRAVITY)
・原作:武藤暁 (Love Bitch)
・楽曲:YASU (YASU pochi Guitar Diary)