クリエイターは日々さまざまな作品を生み出している。普段クリエイターはどのような環境で作品を作っているのだろうか? そんな疑問を解決するべく、クリエイターさんのお宅を訪問して作品が生まれる背景を探ります。記念すべき第1回目は漫画をはじめ、マルチに活動されているクリエイター 森井ケンシロウさんの自宅兼スタジオにおじゃましました。
≪森井ケンシロウ プロフィール≫
1980年生まれ。漫画をはじめFlashアニメーション、作曲なども手がけるマルチクリエイター。近年はWebデザインやFlashゲーム、モバイル、実写などネット全般のコンテンツ制作へと活動の幅を広げている。2007年より竹書房「まんがクラブオリジナル」にて漫画『さかな&ねこ』を連載。
<スタジオの様子>
都内の高層マンションの一室を拠点としている森井さんの自宅兼スタジオは2LDKの角部屋。陽当たりも良く最寄り駅から徒歩5分の好立地条件の住まいだ。UG-K
このスタジオに移ったのはいつからでしょうか?
森井ケンシロウ
去年の7月ですね。ちょうどアニメの制作と思いっきり被っていまして、引っ越しの業者さんに一番始めに部屋に持ち込んでもらったのが机とPCで、それを運んでもらった後ずっと部屋に缶詰で、業者さんが荷物を運び入れている間もずっと作っていましたね。その影響でかたづけられていないダンボール箱が未だにあったりするんですけどね(笑)
UG-K
スタジオ化したことについて良かった点や苦労した点については?
森井ケンシロウ
良かった点は、スタジオモリケンと言う名前が使えてちょっとカッコいいかなと個人的に思っています。あと企業さんに対してスタジオ化しているというちょっとした安心感を与えられるところですかね。作業面ではみんなで集まれる場所としては、都内にあるので人手を集めやすくなったことですね。
森井ケンシロウ
苦労した点は、家賃が高くなったのでやりくりにちょっと苦労してます。本当はもっと安い家賃のところに来るはずだったんですけど、角部屋や窓からの眺めの良さに惹かれて気がついたら契約書に判子を押していました(笑)
UG-K
飼っている猫の紹介をお願いします
森井ケンシロウ
ウチの広報を担当してもらっているスコティッシュフォールドの『チキン』です。飼い始めたのは去年の8月末からです。元々ここに移った理由の1つに猫が飼いたかったっていうのがあるんですよ。
森井ケンシロウ
ウチの猫はあんまり猫らしくない猫なのですが、作品として猫を扱っていく以上、猫と一緒にいたいというのがあって。実家も3匹くらい猫を飼っているんですが、せっかく引っ越すのなら猫が飼えるところが良いなと思ってこのマンションに引っ越しました。
UG-K
『さかな&ねこ』の制作にあたってチキンからアイデアをもらったりすることはありますか?
森井ケンシロウ
あります。隣の部屋にいてもポテトチップスとか開けるとすっ飛んで来るくらい食い意地が張ってるんですよ(笑)
食い意地が張ってるんで逆にそこからインスピレーションをもらって『こんなシチュエーションで魚を食わせたらいいな』とか考えたりしますね。
食い意地が張ってるんで逆にそこからインスピレーションをもらって『こんなシチュエーションで魚を食わせたらいいな』とか考えたりしますね。
森井ケンシロウ
このまえウチで出したチキンの同人誌があるんですけど、こういったペット日記系のこともそのうち色々やってみたいなと思っています。
<製作環境・製作体制>
製作体制は森井さんとso-shiさんの二人が中心であり、バイトや知人に手伝ってもらうこともあるようだ。製作環境は主にWindowsが中心で動作確認用としてMacを用意しているという。UG-K
漫画もPC上で製作されているのでしょうか?
森井ケンシロウ
はい。ウチはFlashで漫画描いてるんですよ。
Flashで連載している人は日本でボクだけなんじゃないかと思っています。
Flashで連載している人は日本でボクだけなんじゃないかと思っています。
森井ケンシロウ
漫画描きの人の多くは『ComicStudio』を使っていると思うんですけど、ComicStudioは書き味がFlashのものと全然違っていて、ComicStudioのほうがキレイな線を引けるんです。
森井ケンシロウ
でもボクとしてはFlashの方が慣れているし、漫画のネタをそのまま携帯アプリやFlashアニメにすることが多いので、Flashで描いておくと使い回しができて非常にやりやすいです。そういった理由もあってFlashで描いてますね。
森井ケンシロウ
あと漫画はFlashなんですけど、アニメーションはFlashのほかに加工用としてPhotoshopやAfterEffectsを使っています。
UG-K
漫画やアニメーションはどのような製作体制で作られているのでしょうか?
森井ケンシロウ
漫画は、基本的にペン入れはもちろんボクなんですが、背景についてはso-shiさんにお願いしています。
仕上げ全般はso-shiさんなんですが、キャラクタが簡単だというのもあって、意外と背景の方が時間取っちゃったりすることが多いですね。ボクが描いただけだとホント真っ白な感じなのでそれを漫画らしくしてもらっている感じです。
仕上げ全般はso-shiさんなんですが、キャラクタが簡単だというのもあって、意外と背景の方が時間取っちゃったりすることが多いですね。ボクが描いただけだとホント真っ白な感じなのでそれを漫画らしくしてもらっている感じです。
森井ケンシロウ
漫画はアシスタント的な役割をso-shiさんにしてもらっていますけど、アニメとなるとどっちも描けるので、作画とかは一緒に進めていくというのが多いですね。
UG-K
分業ができて作業内容によってはどちらもメインとなれるような体制なのですね
森井ケンシロウ
そうですね。先にクライアントさんに作風を聞いておいて、リアルな絵を期待されているときは、ボクがリアルな絵が描けないので、トゥイーンの時にパーツだけもらってボクが動かすみたいなことをやっています。
森井ケンシロウ
あと知人の漫画家の先生にヘルプを頼んで中割りを頼んでもらったりもしています。漫画家の先生は基本的に一枚絵を描ける人たちなので、ペンタブを使われていると、すごいキレイに作ってくれるんです。
森井ケンシロウ
逆にあの方々は、Flashへの適応力がすごいですね。ツール見せたその日にパラパラアニメを作られたりするんですよ。
ニコニコ動画に出したら結構ヒット数が上がるようなクオリティが高いものを描かれているので、実は漫画家は動画の方にもスムーズに移行できちゃうんじゃないかと最近ちょっと脅威を感じています。
ニコニコ動画に出したら結構ヒット数が上がるようなクオリティが高いものを描かれているので、実は漫画家は動画の方にもスムーズに移行できちゃうんじゃないかと最近ちょっと脅威を感じています。
<現在の仕事について>
幅広く色々なことを手がけているので、WebサイトとFlashゲームとモバイル展開など普通だったら色々なところに頼まなければ行けないところをウチが全部手掛けることにより、クライアント側にとってコスト削減に繋がるところがSTUDIO MORIKENの強みであると森井さんは語る。UG-K
現在のお仕事についてお聞かせください
森井ケンシロウ
漫画や携帯のほか企業サイトのアニメーションとか、2/6に発売される猫ラーメンのDVD第2弾で2話分の監督および制作をやらせてもらっています。あと最近実写関係もやっていまして、今回ある企業さんとストップモーションアニメとかやらせて頂いています。
森井ケンシロウ
実際に撮影に立ち会って一枚一枚撮影の指示を出して、それを繋げると行ったことをやってまして、色々な分野に手を出し始めました。
今年はTVアニメ絡みの仕事も少し始めようとしています。その他にも今度巡音ルカの発売と同時に面白いことやれないかなと考えています。
今年はTVアニメ絡みの仕事も少し始めようとしています。その他にも今度巡音ルカの発売と同時に面白いことやれないかなと考えています。
UG-K
最近多い仕事はどのような分野でしょうか?
森井ケンシロウ
携帯が多いですね。ウチが結構携帯に特化しているというのもあるのですが、ゲームやアニメをやっているいろんな会社さんから『この作品を次はモバイルのほうに移したいんだけど、どういう展開をすれば良いのか』と行った相談を頂いて、企画から入らせてもらうような仕事が多いです。
森井ケンシロウ
そういう意味で考えると今一番多いのがモバイルですね。ウチとしてはどちらかというとアニメの方をメインとしたいのですが、それとは裏腹にモバイルの方が多いんです。
Webとかの仕事も結構受けていますが、QRコードとか表示してそこからモバイルサイトに連動するようなことを求めてくる企業さんが多いですね。
Webとかの仕事も結構受けていますが、QRコードとか表示してそこからモバイルサイトに連動するようなことを求めてくる企業さんが多いですね。
森井ケンシロウ
今はモバイルとアニメの仕事で半々くらいとなっています。
UG-K
アニメやゲームなどの作品に対してネット上で批判されたりすることが多いですが、その点に関して不安などはありませんか?
森井ケンシロウ
ボコボコにされるのは慣れてますので、『むしろ来い!』みたいな(笑)。
一番恐いのは話題にもならないで沈んでいくことです。
一番恐いのは話題にもならないで沈んでいくことです。
森井ケンシロウ
『つまらない』というという言葉は非常にありがたいです。ネットって結構ストレートにつまらないって書いてくれるじゃないですか。
だから漫画家さんとかは結構2ちゃんねるの自分のスレッドとか見ないらしいんですよ。やっぱり叩かれているのが厭で凹んじゃうからって。
だから漫画家さんとかは結構2ちゃんねるの自分のスレッドとか見ないらしいんですよ。やっぱり叩かれているのが厭で凹んじゃうからって。
森井ケンシロウ
でもちょっともったいないと思うんですよね。あんなにストレートにつまらないと書いてくれるのは他にはないから。
自分のサイトに来てメッセージを残してくれる人はあまり悪いこと書いてくれないことが多いので、逆に悪いところを書いてくれるのは非常にありがたいと思います。
自分のサイトに来てメッセージを残してくれる人はあまり悪いこと書いてくれないことが多いので、逆に悪いところを書いてくれるのは非常にありがたいと思います。
森井ケンシロウ
もちろんつまらないという意見だけじゃなくて、できれば面白いと書いてくれれば嬉しいですけどね。
実際つまらないと書かれると結構凹みますから(笑)
実際つまらないと書かれると結構凹みますから(笑)
<今後の活動について>
UG-K
2009年の抱負についてお聞かせ下さい
森井ケンシロウ
まず絶対やらなければ行けないなと思っているのは会社化です。取引先の方からも言われているんですけど、仕事を頼むときは会社化していないと頼みにくいと言う指摘がありましたので、ウチもまずは会社化しないといけないなと思っています。
森井ケンシロウ
また今年はオリジナルのゲーム1本とアニメ1本を出したいと思っています。
UG-K
オリジナル作品の展開先はどこを考えていますか?
森井ケンシロウ
はじめはコミケでの展開を考えています。今だったらニコニコ動画とかもあるのでWeb上でも良いのですけど、やっぱり僕としてはモノとして残したいという気持ちがありまして。
森井ケンシロウ
ウチは元からアニメや漫画もデジタルで入稿しているので手元に原稿とか残らないんですよ。だから同人誌とかで手に取れるものが作れるのはすごい嬉しいです。今回も基本的にはDVDみたいな形で作ってみたいなと思ってます。
森井ケンシロウ
あと今までのオリジナルアニメではずっと声が入ってなかったんですけど、今回はお世話になっている声優さんにお声をかけてアテレコを入れる形で作ってみたいなと思います。
森井ケンシロウ
この前仕事で声優さんにお願いしてアテレコしたんですけど、やっぱり自分の作品に声が入るとすごい面白いですよね。Flashはじめて5年目になりますが、5年目にして新しい喜びを見つけました(笑)
UG-K
作品の完成を楽しみにしてます。ありがとうございました。
森井ケンシロウ
ありがとうございました。
・森井ケンシロウ.tv