2009年 9月12日(土)、新宿ロフトプラスワンにて映像作品のライブイベント『FRENZ』が開催された。“FRENZ”はFriends(仲間達)とFrenzy(熱狂)をコンセプトにWEB上を中心に活動する映像作家による作品を参加者全員で一体となって楽しむことを目的としたイベントであり、 有志によるオフラインイベントとしては 2年ぶりの開催となる。しかしこれまでのオフラインイベントとは異なり、出展者はFlashクリエイターだけではなく、ニコニコ動画などで活躍しているクリエイターやパフォーマーも参加している。出展者、来場者ともにこれまでのイベントより幅広い層の参加が見られた。

主催の as@地生 氏の乾杯の音頭と共に始まったイベントは 3部構成であり、はじめに上映されたオープニングの制作代表としてyama_ko氏が壇上に登場し、お祭りをテーマに ShakeSphereさん にFRENZ向けのオリジナル楽曲を提供頂いた経緯が語られた。
8ットデタマンのうた(NRF)
続いて壇上に登場したのは、やたらがす氏。これまで狂気系と呼ばれる作品を制作してきたが、一転してゆったりとした不思議なアニメーション作品となっている。その理由として、今まで自分の世界を前面に押しだしすぎたので、表現をシンプルにして自分の好きな絵本の世界を作ってみたことが述べられた。
次に登場したのは、懐かしの2ちゃんねるアスキーアートのキャラクタを用いたパロディアニメを制作したNRF氏。Flashを作るきっかけとなった憧れやイベント参加に対する長年の夢を作品に込めたことが語られた。

神のみぞ知るオパイ(tigo)
そして第1部最後に登場したのはtigo氏。作品の内容について多くを語ることはできないが、これまでオフラインイベントで上映された来たPV系の作品とは異なり、今回は「妄想爆発!! 奈々子」さん系の作風となっている。作風を変えた経緯についてtigo氏は、最近の政治やマスコミに対する憤りとこれまでのイメージの転換を図りたかったことを語った。
その他、第1部では主にFlashイベントに参加されているクリエイターの作品が上映された。各上映作品の作品名と出展者は次の通り(敬称略)。

映像オフラインイベント FRENZ 夜の部OP (yama_ko, I.C.yas, ダークス(ry)
Wind Orchestra (misokabocha)
星と少年と石の塔 (やたらがす)
・NEW WORLD (player2)
すすすす、すき、だあいすき (fla3)
8ットデタマンのうた (NRF)
・丁髷(ちょんまげ) (RAG)
・勝手に動かしてみた (無精髭)
・リンゲルロック (よこしま)
・summer (西廻り航路。)
神のみぞ知るオパイ (tigo(暗黒面ver))
街のしあわせ屋さん (こな&風鈴)



第2部では、Flashクリエイターのほかニコニコ動画で活躍しているクリエイターなどによる、実写系からアニメ、PVなど多彩なジャンルの作品が上映された。最初にDDDotを彷彿とさせる8bitサウンドのPVを上映されたクロユキ氏は壇上で、ピコピコ系PVの制作に対する想いを語っていた。続いて上映された春原ロビンソン氏の作品では会場が爆笑の渦に包まれた。急遽壇上にも登場し、作り始めた時期やプライベートの話題で会場をさらに盛り上げた。次に壇上に登場したかぜとき氏の作品は、色彩や光の表現豊かなPVであり、自らもオーロラのように花の色が次々と変化していく表現を込めたタイトルにしたことや司会補佐のyama_ko氏と技術論について熱い語り合いが行われた。


第2部最後に公開された、久海 夏輝氏の作品は17分に渡る超大作であり、無声作品ながらも登場人物の心理描写が巧みに描かれていた。壇上では、Flash、AfterEffects、Premiereでわずか3ヶ月で作られたという発言に会場からは驚きの声が聞こえた。
その他にもタイトルを決めた経緯や深夜イベントで他のクリエイターと交流を深めたい想いなどが語られた。第2部に上映された作品は次の通り。

・OVER GAME (クロユキ)
・FRENZ (春原ロビンソン)
・自己紹介 (すずき)
・school (くつした)
本当に大事なのはイチモツだけ (雅卵堂)
Flourish (かぜとき)
・TVアニメ「科学少年 マサヒロ」OP (Pマン)
・SORA (久海 夏輝)


誰も得しない伯方さんRemixをPVっぽく (√Effect)
第3部では、主にYouTubeやニコニコ動画を中心に活動されているクリエイターの作品が上映された。トップを飾ったのは、スペシャルゲストであるぴろぴと氏。尺は短いものの、ぴこちゃんの可愛さとラストのギャップの凄まじさに会場は驚きに包まれた。
最初に壇上に登場したのは√Effect氏。アニパロに定評のある氏は今回も伯方の塩の擬人化キャラを使ったアニパロを作成しており、ラマーズPへのリスペクトや制作の裏話などに会場は笑いに包まれた。続いて登場したのはAOHATA氏。携帯電話をテーマとしたオシャレ系テクノポップのモーショングラフィックスは溜息が漏れるほど完成度が高いものの、完成させたのは開幕後の会場であったことや遠路から会場まで来た経緯などが語られた。

初音学校1+2(機能美p)
最後に壇上に上がったのは、機能美p氏。初音ミクやアイドルマスターを題材としたPVでお馴染みの氏は、動画も音楽も自分で作られている。ロゴなどのデザインセンスに注目されていたが、本人曰く単純化を突き詰めていった結果であることなどが語られた。第3部で上映された作品は次の通り。

ぴこたんのお料理クッキング♪ (ぴろぴと)
・ゆっくりにお兄ちゃんに言わせたかった (ラマーズP)
誰も得しない伯方さんremixをPVっぽく (√Effect)
マナームード mannermood 2009 autumn catalogue (AOHATA)
フラスコバルディのオルガン練習曲 (olo)
・バトルアイロニング (DNA)
北風と太陽 (マックスカフィ)
初音学校1+2【初音ミク→テクノでコント(旧+新作)】 (機能美p)
・Danger Paradise -1年前の生卵、再検証- (ヲタケン)
リナリアの花 (Ao)
捨て猫ロシアンブルー (llcheesell)
映像オフラインイベント FRENZ 夜の部ED (yama_ko)


こうして、いくつかのトラブルがありながらも5時間半にわたって開催されたイベントは、その時間を感じさせないほどの興奮冷めやらぬ中、無事閉幕を迎えた。イベントを終えた主催のas@地生氏に今回のイベントの感想を伺いました。

UG-K
イベントを終えた感想を一言お願いします

as@地生
観覧してくださった皆様、作品をご提出頂いた上映出展者様、そして私に振り回されながらも尽力してくれたスタッフ。全ての参加者各位に、ありがとうございました。
最高のFriendsと出会うことができた、最高にFrenzyな夜でした。

UG-K
これまで様々なイベントを主催されてきましたが、今回初の司会ということで今までにない苦労や新たな発見などがありましたらお聞かせください

as@地生
私はあまり表に出ることには慣れていなく、また、話し出すと冗長になってしまうので観覧されている方に”きちんと伝える”ということに大変苦労しました。新たな発見としましては、参加者の若返りです。

as@地生
私がオフラインイベントに観覧側として参加していた頃は平均年齢は20代後半から30歳くらいだったと思うんです。今回のイベント参加者の年齢層は20代前半くらいだったのではないかと思います。
自分もまだ20代後半に差し掛かったばかりのひよっこではありますが、それよりも更に若い人達の意欲と才能を感じました。

UG-K
来年の開催のお考えは?

as@地生
イベント当日までは準備で精一杯で、次回のことまで考えている余裕はありませんでした。しかし当日イベントが進むにつれ、頭には”またやりたい”という気持ちばかりがふくれあがっておりました。

as@地生
今回はイベント準備中に開催が危ぶまれるなど、多くの方々にご迷惑とご心配をおかけしたことで、私には次回を語る資格は無いと考えていたんですね。ただ、イベント終了後に皆様から頂いたお言葉は、次回を期待して頂いているということばかりでした。

as@地生
私の使命はご協力頂いた皆様、ご期待頂いている皆様に作品を公開する場、そして創作を通じて人と人が繋がる場をつくることなのだと感じました。
時期はまだこれからですので未定ですが、必ずFRENZ第2回は開催します。

UG-K
ありがとうございました


今回のイベントを終えて思ったのは、出展者の生の声や観客の生の反応が聞けるというだけではなく、オフラインイベントでの上映が憧れだったという出展者がいることや、リスペクトしている出展者とされている出展者の双方の作品が同時に見れるという点など、オフライン上映イベントの潜在的な価値が改めて感じられた。一方で動画共有サービスの登場により、ツールによる敷居や創作物のジャンルに捕らわれることがなくなったことで、『表現したいものは何なのか』がクリエイターに真に問われる時代になったことを感じさせたイベントでもあった。

FRENZ公式サイト