【CloseUp Flash Reloaded】初音ミク特集2


最近ネットでは「初音ミク」に関する話題が注目されている。前回に引き続き今回も初音ミクの作品を時系列に紹介するほか、Otomania氏&たまご氏のインタビューをお届けする。



<2007年10月>
発売から1ヶ月を経つ頃には既に1日100作品近くの動画が毎日アップされるようになり、様々な作品が入り乱れるようになった。そのような中、初音ミクを特集したDTMマガジン11月号が発売された。初音ミクの体験版が収録されていることもあり、発売から2日後には完売する店が続出するなど、音楽雑誌としても異例の売れ行きを見せた。

 ・DTMマガジン「初音ミク」 ほぼ完売 増刷予定なし

DTMマガジン11月号の発売により体験版を利用したユーザが増えたことで、初音ミク作品の登場に更なる拍車がかかった。『タイムリミット』という初音ミク体験版のイメージソングが生まれたことからもその勢いが感じられる。

オリジナル曲 「タイムリミット」 Full ver


しかしあまりに多くの作品が誕生したことにより、全ての作品に目を通すことが困難になりつつある中で自然発生的に生まれたのが、『週刊みくみくランキング』や『月刊VOC@LOIDランキング』などのランキングを集計した動画である。多くの作品の中から注目の動画が一目でわかるようになり、初音ミクファンにはかなり有力な情報源となった。

またこの時期からニコニコ動画系のネタを初音ミクに歌わせた作品も登場してきた。特に初音ミクに組曲「ニコニコ動画」を歌わせた『初音ミクに組曲「ニコニコ動画」を調教した結果。(修正版)』やキーボードクラッシャー少年の音声を空耳風に編集し、はちゅねミクに踊らせた『たぴ・ぱん』がある。これまでの初音ミクに対するイメージを良い意味で破壊した『たぴ・ぱん』には、某アニメの結末をオマージュしたラストシーンが必見の続編『ゼータ・たぴ・ぱん』もあるのでぜひご覧頂きたい。

たぴ・ぱん (カラオケ字幕付)


『オリジナル』系の曲については初音ミクの特性などを掴んできたためか名曲が数々生まれた。特徴的なのは初音ミク自身の心境を歌った作品が多いことである。いずれの歌も制作者の初音ミクに対する思い入れの深さが感じられる。

celluloid (Full)


『えれくとりっく・えんじぇぅ』Full ver.


ハジメテノオト(Fullバージョン)


私の時間


「melody…」


『オリジナル』系の作品の発展と共に向上が著しかったのが、『描いてみた』系の3D分野である。モデリングデータによって3D化された初音ミクは、オリジナル系の歌と合わせて3DアニメPVとして公開されるようになった。特に初音ミクのデモソングをBGMとした『3D初音ミクに01_balladeを歌わせてみた』は、元々イラストのみであった初音ミクというキャラクターが発売からわずか1ヶ月余りでここまで来たかとその進化のスピードに大変驚かされた。

3D初音ミクに01_balladeを歌わせてみた


3DみくみくPV♪


ひっそりと”みっくみく”を踊らせてみた


また9月は電子工作や造形物が中心であった『作ってみた系』では、FLASHによるデスクトップアクセサリやブログパーツなどのデジタル創作物が増えていった。

 ・ミク時計 (猫牧場カンパニー(改))



<「Ievan Polkka」制作者インタビュー:前編>
前回紹介した初音ミクブームの火付け役となった作品『VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた』を制作されたOtomania氏とたまご氏に今回インタビューさせていただき、制作のキッカケや初音ミクの魅力について伺った。(以下敬称略)

UG-K
まずはじめにおふたりの簡単な自己紹介をお願いします。

Otomania
えーどうもこんにちは。ぶっちゃけて言うと、いまだに初音ミクブームの渦中にいるという実感があまりないOtomaniaです。Otomania.netというサイトにて、自分が製作した音楽やFLASHを公開しております。

たまご
はじめましてたまごと申します。FLASHでイラストを描いたりゲームやアニメーションのスタッフなどのお仕事をさせて頂いてりしています。

UG-K
早速ですが「Ievan Polkka」の制作についてお聞きしたいと思います。今回Loitumaの曲が使われてますが、ニコニコ動画でも英語の歌詞で苦労されている作品を多く見かけます。そんな外国語の曲である「Ievan Polkka」を選択した理由は何でしょうか?

Otomania
ものすごい簡単な理由で申し訳ないんですが、『面 白 そ う だ か ら』です。

UG-K
確かにシンプルですね(笑)

Otomania
間単に説明させて頂くと、初音ミクは英語入力を受け付けないんですよね。TTS(テキスト・トゥ・スピーチ)で言うところの、英語エンジンだと日本語を入力してもちゃんとしゃべってくれないのと似ていますね。

Otomania
だから皆そういうのは敬遠するだろうなぁとは思ったんですが、それ以前に面白そうという感情が先頭にきちゃったもんだから、デメリットとかリスクとかもう関係なかったんですよ(笑)

UG-K
購入したときの動機がそのまま選曲にも繋がっている感じですね。

Otomania
ですねぇ。もっと具体的に言えば、ここにいらっしゃるたまごさんを笑わせようと選んだ曲が「Ievan Polkka」だったんですよね。それで最初はミクの歌声だけを渡したんですよ(笑)

たまご
何してるんだろう…この人って夜中に爆笑しましたね(笑)

UG-K
この作品によって「初音ミク=ネギ」のイメージが定着したと共に、もう一つ定着したものに「はちゅねミク」があります。この「はちゅねミク」はどのようにして誕生したのでしょうか?

たまご
そうですね。Otomaniaさんの「Ievan Polkka」を聞いてテンションが物凄く上がって、メッセのラクガキから生まれました(笑)

たまご
絵描いてといわれて勢いで描いたらそれがうけてそのままキャラクターに(笑)

たまご
実は私ネギの元ネタを全然しらなくて。はちゅねを描いた時に「一緒にネギをもたせてね」っていわれてたんですね。

たまご
で、回してといわれたんですが、どう回していいのかわからず「普通はネギを回す時はこの動きでしょ(笑)」というのでタテ動きになりました。笑われましたけど(笑)

UG-K
元々のロイツマアニメと回し方が違うのにはそんな理由があったんですね(笑)

たまご
はい。なので微妙にネギ振りというかタテ回しというか変な動きになってます(笑)

Otomania
最初見せてもらったファイルだと、なんか動きがぎこちなくって、こっちで最終的に少しきびきびとした動きに修正したんですよ(笑)

UG-K
イラストやネギ回しの動きなどはFLASHで制作されたのでしょうか?

たまご
はい、そうです。

Otomania
最初はメッセンジャーの手書きで、はちゅねの原型みたいなものができて、それを見た私は「これで動画作れば必ずヒットする」と確信がもてたので、あとはたまごさんに清書してもらうようお願いしました。そこからはすべてFLASHでの作業です。

UG-K
なるほど。ヒットする確信があったと話されたとおり、公開されてから非常に大きな反響がありましたが、感想はいかがお持ちでしょうか?

Otomania
正直言って予想をはるかに超えてましたね。まさか日本のDTM市場に歴史を残すほどの規模になるとは思いませんでしたよ。動画を見て皆が楽しんでくれれば十分でしたから(笑)

Otomania
ただ、ここまで大きな現象になったのは、勿論私たちだけではなく、その他大勢のユーザーさんたちが素晴らしい作品を次々と送り出したのもありますし、このような現象に対してとても真摯かつ柔軟に、時には大胆に語ってくださった販売元のクリプトン・フューチャー・メディアさんの人柄ならぬ企業柄もよかったんではないかなと思います。

たまご
私はただただビクビクしていました(笑)

Otomania
とても良い連鎖ができたんですよね。作る側、供給する側、お互いは勿論のこと、同じサイドの人たちもリスペクトし、皆で楽しくやりましょう的な雰囲気があったのも非常にうれしかったです。

UG-K
他の作品にも利用されたり、3D化されるなどして展開していった「はちゅねミク」に関してはどのような感想をお持ちでしょうか?

Otomania
非常に楽しんで見てますよ(笑) たまごさんなんか、毎日「はちゅねチェック」してるみたいで、何か面白いものがあると、つぶさに連絡してくれますからね(笑)

たまご
きゃー(笑)

Otomania
でもこれも先に述べた通り、皆が「楽しい」、「面白い」という原動力があったからこそ、良い連鎖になったんだと思いますね。その結果、こっちも楽しさや面白さを返してもらってる気がして、とてもありがたい気持ちです。

たまご
“作ってみた”系統の動画は見てると作者さんの楽しい雰囲気が伝わってきてこっちも楽しくなってしまって。3D関係はいい具合に壊れてたのしいですね(笑)

Otomania
DTMや絵以外の分野までにも発展しましたしね。例えばカー用品とか(笑)

たまご
そうそう。機械を使ってはちゅねを描いたり、ロボットが出てたり(笑)

Otomania
ニコニコ動画で「はちゅねミク」タグを検索すると、かなり面白いものがたくさん出てきます(笑)


(次回に続きます)