年末イベント特集3回目は、昨年12月24日から27日まで開催された『slashup03 おこた祭』。本イベントは、前身である『紅白FLASH合戦』の流れを汲む年末最大のオンラインFLASHイベントである。今回は、昨年まで行われていた対戦形式の公開ではなく、アニメやPV、ゲームなどのジャンル毎に部門を分けての公開となった。そこで今回は「ウェブアニメ部門昼の部」の中から注目の3作品を紹介する。
■MUSIC FIGHTER LAST EPISODE FREEDOM
音楽を管理する団体から音楽の自由を取り戻す戦いを描いた物語の最終話。戦いの中で音楽を使う立場と管理する立場から発せられる主張は、どちらも正論であるが故になかなか考えさせられるテーマとなっている。また、3部作となっている本作はいずれもslashupのイベントで公開されているのが特徴的だ。どのような目的で3部作として構成したのか制作者のtigo氏に伺ってみた。
「3部作構想は1話制作開始から考えてました。
1話のテーマ『音楽は音を楽しむ と書いて 音楽』
2話のテーマ『音楽は力を与えてくれるもの』
3話のテーマ『音楽のあり方』
今回の3話では 音楽制作者から見たFLASH制作者への意見を想像で描きました。音楽を自由に使いたいというのは皆が思ってることだと思うんです。JASRACをネタにしたFLASHというのは結構沢山出てきたわけです。しかし『自分が作った音楽を勝手に使われた側』の意見は誰も扱ってなかったわけでして…
自分が作ったものを勝手に使われて意図しない形になったり、許可無くお金儲けの素材などに使われたら嫌だと思うんです。それは音楽制作者でもFLASH制作者でも同じだと思うんです。そういう意味ではあの『閣下』も根っから悪い人ではなかったと思うんですけどね… まぁ完全に悪役になっちゃいましたが(笑)」
なるほど。場合によっては、ストーリー中の主人公と『閣下』の立場が全く逆になっている可能性もあるのかもしれない。
「まぁFLASHを作る過程で著作権は避けて通れないものなので、FLASH制作者側ももう少し著作権の事を考える必要がある。そう受け止めてもらえるよう願ってます。」(tigo氏)
著作権の現状について問題提起するという比較的重いテーマを、歌と戦いを主体としたエンターテイメント性のあるストーリーへと昇華した名作といえるだろう。物語全体の流れを把握していただくためにもぜひ1話からご覧いただきたい。
・tigo’s Factory
■トチガミ
舞台となる島では、昔から土地神が崇められていた。開拓が始まったあとも崇め続けられたが、時の経過は科学を発展させ、いつしか人間は土地神から科学技術へと崇拝する対象を変えていく…
言葉や説明で語ることなく映像のみで構成された本作は、産業革命や工業化を経て便利な世の中に発展したことにより忘れてしまった何かを思い起こさせてくれる。
「この作品のテーマは、『歴史の変化』といったところが妥当でしょうか。あまり深くは考えてなかったのですが、時間がどんどん過ぎていき、歴史に変化が現れることで、世の中で崇拝され続けていた神様という存在が、どんどん人の世界から離れていく。こうして忘れられていく神様の存在をこの作品に描きました。」(おぎしろ氏)
今回の作品を作ったキッカケや内容の詳細がブログで紹介されている。作中の世界に興味を持たれたら覗いてみてはいかがだろうか。
・Holography
■変わりゆく宇宙と変わらない俺達と
交通事故により飼い主と離ればなれになった子犬が再び飼い主のところに辿り着くまでを描いたMusicClip風の物語。子犬が成犬になるほど長い間移動したのかと思うとその帰巣本能には驚かされる。
「kotetu様の楽曲、「Life is not a dream」を聴いてなんとなくムービーが頭の中に浮かんだ、というのが製作の動機となります。
今回は「光」「陰影」の表現・演出を意識してみました。アニメーションの方も、もう少し作りこんでみたかったのですが、締め切りの関係であえなく時間切れに…」(ごきぶりの出汁氏)
様々な出会いと別れを繰り返しながらも家路にたどり着くことのできた結末に、思わず犬に労いの言葉をかけてみたくなることだろう。