これまで紹介したFlashムービーはアニメやゲームなど動きのある映像が多かったが、Flashには文章系と呼ばれる静止画の背景をバックに文章を読ませることを目的とした作品がある。ビジュアルノベルやサウンドノベルとも言われるジャンルが商業ゲームの世界にあるが、Flashでも比較的簡単にそのシステムが実現できるため、個人制作によるオリジナル小説をFlash化した「Flashノベル」を最近多く見かけるようになった。多少のアニメーションが付いた短編小説のFlashノベルは数多くある。しかし中には一話ごとに作品を切り分けた長編のオリジナルFlashノベルも存在する。今回はそんな長編Flashノベルを2作品紹介する。
■ごがつのそら。
五月という曖昧な季節、住宅街の小さな神社を舞台に、五月病の新入社員がピアノの音に誘われて向った先は神社。そこで一人の女子高生のアルバイト巫女に出会う。互いの悩みを打ち明けることによって心が通じ合いながらも、もう一歩を踏み出せない微妙な距離感が印象的な物語。神社という空間に加えてBGMのピアノの調べがゆったりとした時間の流れを感じさせる。
「奇跡も事件も起きず、ただ二人が神社の境内でぼーっと空を見続けるような話を目指しました。ピアノの音に耳を傾けながら、五月という曖昧な季節を感じさせられたらいいなと思います。」(吉村 麻之氏)
ホームページに公開されているNScripter版「ごがつのそら。」には、おまけシナリオ「はちがつのゆき。」が含まれている。エンディング後の二人を知りたい場合は是非ご覧頂きたい。
・むきりょくかん。
■こころのアリカ 第一章
高校一年生なる夏目和也には不思議な「チカラ」が見えていた。しかし、今の彼にとってそれは存在する意味がわからないものだった。そんな高校生活最初の夏休みが間近に迫ったある日、それをひとりの女の子に偶然見られてしまったことから始まる物語。「チカラ」に関わりたくない”夏目和也”と「チカラ」を得たい”橘ありか”の対照的な関係がストーリーを奥深いものにしている。また、Flashノベルでは音楽が、各シーンを盛り上げる上で効果的な役割を担っている。
「音楽は各音楽サイト様からお借りしているもので私が制作したものではありませんが、お借りした素晴らしい音楽に登場人物の心情やその場面などをリンクさせて盛り上げていけることがFlashノベルの良いところかなと思っています。」(Kaz氏)
現在、最終話の第6話を鋭意制作中とのことで完成が多くのファンに期待されている。
・アリカプロジェクト