【CloseUp IA】『塚原重義、奮闘中』イベントレポート(現在編)


現在編トークショーの模様


2017年11月23日、東京・入谷の「SOOO dramatic!」にてアニメーション監督・塚原重義さんの応援イベント『塚原重義、奮闘中』が開催されました。
本イベントでは、過去作品の上映のほか過去・現在・未来をテーマに塚原監督と縁のあるゲストとのトークショーで構成されていたほか、イベント後には交流会が設けられていました。
前回の過去編に続き、現在編として2012年以降に制作された『端ノ向フ 予告編』と『女生徒』が上映された。

『端ノ向フ』 特報


《女生徒》予告01


<現在編ゲスト>
皆川一徳: アニメーター、数々のアニメ作品にて原画、作画監督を担当。最近では『マクロスΔ』にて作画監督、『劇場版ポケットモンスターキミにきめた!』にて作画監督。塚原作品においては『端ノ向フ』でアクション作画監督、現在制作中の最新作ではキャラクターデザインを担当する。
大童澄瞳:漫画家、別名デンノー忍者、月刊!スピリッツにて『映像研には手を出すな!』連載中
ブログ『ザリガニを釣れ!』管理人



皆川一徳
過去編と現在編と見てきて分かるように、情報量がものすごく増えてると思うんですよね。それに関しては制作体制の変化というのが大きいと思うのですけれど、過去編と比べて関わってる人数が多くなっているのですか?

塚原監督
そうですね。過去編でお話ししたように学生時代を経て仕事をしていくようになった過程で、スタッフワークでアニメを作るということに面白みを感じてきて、その後また自主制作を作りたいなと思って『端ノ向フ』を作ったという経緯があります。

皆川一徳
今まで少人数でやってきて、そこから大人数の体制になっていく流れの中で、どういった点が難しかったですか?

塚原監督
自分の意図を伝えるというのが難しいかったですね。最初の頃は、自主制作時代の方法のままやってしまったので色々大変でした。
やはりきちんと脚本やコンテがある既存のアニメのやり方がいいなと…大人数の体制になってからはコンテをしっかり作るようになりました。

皆川一徳
それはなかなかのご苦労でしたね(笑)
大勢の人が関わっているという中から出たアイデアというのは、この作品の中に入っていますか?

塚原監督
はい。僕はもともと人間を描くのがあまり得意な方ではないので、キャラクターデザイナーから上がってくるもの採用することで、自分の中から出てこないアイデアを作品に取り入れていくのが楽しいですね。

皆川一徳
そういうことが情報量の多さだったりとか、世界観の広がりというものに繋がっていると?

塚原監督
やっぱり一つの架空世界なので、今までは自分の意識が反映されたものだけなのですが、一つの架空世界ということはそこには色々な人間が暮らしていて、その世界には多分色々なデザイナーがいて、色々な看板があったり色々なものを作ったりしている。
だから僕の範疇外なものも混ざっていて少し混沌としていたほうが、一つの世界としては面白いのかなと思ってます。『端ノ向フ』あたりからそう思うようになったんですけれども。

大童澄瞳
『ウシガエル』あたりから明らかに昔の作品と比べて一つの画面に込める情報量が増えていて、どれくらいのスタッフでやっているんだろうとか、自分だったらどうやって人を集めたり声優さんに頼んだりしたらいいのかとか、羨ましく思うことが結構ありました。

塚原監督
仕事をしてきた過程で知り合った人だったり、スタッフ、クリエイター、声優さんと仲良くなっておいて自分の作品を作るときに声をかけてみたり。皆川さんともそういった中で出会いました。

皆川一徳
初めて知り合ったのは『アームズラリー』という作品を作る直前ぐらいですかね。そのころ共通の知り合いを通じて一度会って、その数年後に仕事帰りの電車の中でたまたま会って、次回作のお誘いを受けました。

塚原監督
それでもあの頃は人集めに苦労していて…皆川さんが関わるようになってから、皆川さんのツテで参加してくれる人が増えて完成に繋がったりしましたね。

皆川一徳
わりとこういう地道に人を集めていく作業は必要でしたね。



――皆川さんは現在商業アニメで活躍されていますが、塚原作品に関わった中で苦労されたことや驚いたことはありますか?

皆川一徳
僕の関わったパートでは、まず作り方が商業作品とそれほど変わらなかったんです。つまりアニメを作る流れがしっかりできていていたところがすごいと思いました。

塚原監督
すごい作品を作るためにはそうしなきゃと。ここに至る数年で普通のアニメの作り方に寄せました。

皆川一徳
なので作り方そのものに関しては、本当に商業の作品と変わりなかったですね。

塚原監督
要はスタッフを集める時、参加してもらうハードルを下げるためになるべく皆ができるやり方をやろうと切り替えたところがあります。

皆川一徳
あと商業作品だと通りにくい企画っていうのがどうしてもあるのですが、『端ノ向フ』で面白いなと思ったところは、あえて解説を入れない部分っていうのがものすごくある作品だと思うんです。
例えば主人公乙葉の最後の結末というのは、見た方によって多分捉え方が違うと思うのですが、これは塚原さんの中で正解は用意されているのでしょうか?

塚原監督
それはもちろんありますけれど、言わない方がいいですよね(笑)

皆川一徳
これは恐らく見た人が考えてもらう部分だと思うし、そこが面白いなと思ったんです。

塚原監督
ニコニコ動画で公開している作品のコメントを見たりするのですけれど、こういう解釈もあるのかとか、こういうふうに展開したらこう解釈されるのかとか。
自分が思っているのと違う捉え方をされていることが多いと、勘違いされるというのはこういうことなんだなと色々勉強になりました。

――情報量がどんどん増えていったというのがむしろ新しい解釈が色々生まれてくるきっかけになったと思います。

塚原監督
自分自身が映画とかで考える余地があるような作品が好きだというのもあって、『端ノ向フ』でも意図的にやっているところがあります。

塚原監督
自分にとっての面白い作品って見終わってすぐ忘れられてしまうような作品ではなく、「あれは何だったんだろう?」って、ずっと喉に詰まっているような作品が僕は面白いと感じていて、自分もそういう作品を作りたいと思っています。

大童澄瞳
僕はどうしても画面優先で見ちゃうので、時代背景とか地域とかいうのを見る傾向があります。
過去作と比較すると『ウシガエル』の背景にある大きな構造物や外壁のテクスチャーと今の背景技術はだいぶ差が出てきているので、その辺でこだわりというのが、至るところに散りばめられていると思います。
ストーリーの隠し要素としてある背景の情報量が独特の雰囲気を強く出していて、作品として一つになっているように想います。

大童澄瞳
最初に画面をパッと見せた時に、この作品は情報量が多い作品なんだと言うことを観客に意識づけることで内容の濃さが数段上がり、この作品を見る覚悟というかプレッシャーを感じさせる所がすごくいいと思います。

皆川一徳
本当にその通りで、お客さんをすごく信頼しているなという感じがあるんです。
普通に見たら分からなくなっちゃう可能性も結構あると思ってるのですが、そこはしっかり映像を見ていく中でお客さんにきちんと考えて解釈してもらいたいという想いを感じますね。

塚原監督
確かにそういう気持ちも半分ありつつ、 本当は好きなように見ていただければと(笑)

塚原監督
『端ノ向フ』あたりからから明確に考えているのは、その時自分が考えていたものをタイムカプセルみたいに作品に封じ込めようということです。
映像って自分が死んでも残るかもしれないじゃないですか?
何か自分の生きた証というか自分のその時の空気というのを封じ込められるものではないかということをちょっと意識しています。




現在編では塚原監督の作品作りに対する姿勢を感じ取ることができました。
次回は今後の塚原監督の活動に関する未来編のトークショーの模様をお届けします。