2007年末にVOCALOID2 キャラクター・ボーカルシリーズ第2弾として『鏡音リン・レン』が発売された。前回に引き続き、発売元のクリプトン・フューチャー・メディア(株)メディア・ファージ事業部さんに『鏡音リン・レン』を中心にVOCALOID2シリーズにまつわる様々なことについて伺ったインタビューをお届けするとともに、ネットに公開されている作品紹介を中心に『鏡音リン・レン』のブームの動きを探ってみたい。
<鏡音レンの作品傾向>
前回と同じく発売直後から現在までの作品数から考察すると、発売直後から一貫してレンの作品よりリンの作品が多く2倍近くの開きがあることがわかる。1つのパッケージ製品として生まれたのにもかかわらずこれだけの差があるのはなぜだろうか? 鏡音リンより遅れてレンが発表された事もあるだろうが、大きな要因としてはやはりキャラクター性にあるのではないかと考えられる。
初音ミクには“ネギ”、鏡音リンには“ロードローラー”など人気を獲得してきたVOCALOIDたちは、必ず特徴的なアイテムをユーザによって与えられてきた。これらのアイテムがキャラクターを定義づけ、様々な作品を生み出す動機になったことが考えられるが、鏡音レンには未だそういったアイテムがない。多くの作品でコーラスのみの活躍であったり、登場すればロードローラに轢かれるなど憂き目に遭っているレンであるが、兄姉との共演によって誕生した以下の作品により一躍注目を浴びることになる。
■「男女」を実際にKAITOとレンに歌わせた(テンション増し増し改良?Ver.)
注目を浴びた元の作品は歌も原曲のままであったが、KAITOやMEIKOとのコラボレーションによってこれまでリリースされてきたVOCALOIDシリーズが再評価されるようになったのは、鏡音リン・レンから生まれた新たな傾向である。特に鏡音レンには他のVOCALOIDシリーズと共演した作品が多く見られる。
■静かな湖畔 LIVE in 沖縄.
■【初音ミク,鏡音レン,MEIKO】再び三人仲良くFortuneDiver
■【MEIKO】バレンタインの【ミク、リン、レン、KAITO】
他のVOCALOIDたちと歌うことによって歌い手としての居場所を獲得したレンであるが、ソロになると現在のところ名曲をカバーした歌が多い。
■鏡音リン課題曲『エージェント夜を往く』に挑戦しました
ロードローラや亜美・真美のイメージが強い鏡音リンであるが、一方でオリジナル曲も早くから生まれ、通りの良い声を武器に表現力豊かな楽曲が生まれている。
■【鏡音レン】鏡音レンに鳥の詩を歌ってもらった
■【鏡音レン】亡國覚醒カタルシス
■【鏡音レン】日本ブレイク工業社歌
初音ミクで作成したシーケンスデーターを使って歌わせたりするなど練習用として作られたものが多いと推測されるが、キャラの確立していない中でどのような曲が鏡音レンのイメージに合っているのかといった試行錯誤的な要素があるようにも感じられた。このような状況ではあるが、レンによるオリジナル作品も着々と生まれつつある。
■【鏡音レン】雲の遺跡 ver lenオリジナル曲
■【鏡音リン&レン】ハイブリッド
早くから表舞台で人気を集めていたリンとは異なり、裏方での活躍が多いながらも着実にファンを集めつつあるレン。鏡に映った分身という設定でありながら大きく異なる道を歩んできた二人が今後どういった形で活躍していくのか楽しみだ。
<「鏡音リン・レン」インタビュー:後編>
ピアプロ設立について
UG-K
ブームの起点であり、現在も作品公開の場の中心となっているニコニコ動画があるにも関わらず、同じ分野と思われるPIAPRO(ピアプロ)を立ち上げたのはなぜでしょうか?
Crypton Future Media
ニコニコ動画では、「初音ミク」を使って作った楽曲と、「初音ミク」を描いたイラストをマッシュアップした動画が数多く見られます。
複数のユーザ作品が編集されて、毎日新しいコンテンツが生まれる現象が、CGMの新しい潮流に思えて大変注目していました。
複数のユーザ作品が編集されて、毎日新しいコンテンツが生まれる現象が、CGMの新しい潮流に思えて大変注目していました。
Crypton Future Media
この流れを更に加速するには、クリエイター同士が交流したり、共同で作品を創ったりする場所が必要と感じましたので、昨年12月3日に「ピアプロ」をオープンしました。
作品を「公開する場」としてのニコニコ動画と、作品を「創る場」としてのピアプロ、という相互補完関係ができればと思います。
作品を「公開する場」としてのニコニコ動画と、作品を「創る場」としてのピアプロ、という相互補完関係ができればと思います。
UG-K
ピアプロでは今現在VOCALOID関連のコンテンツのみ扱っていますが、これからの展開予定を教えてください。
Crypton Future Media
「ピアプロ」は、“peer production”(※)を略して命名しました。その言葉が意味するように、ネット上に分散する大勢のクリエイターが参加して、得意な創造力を発揮して、新しいコンテンツ生産方法と富の分配方法が達成できればと考えています。
※『ウィキノミクス』によると、“peer production”とは「共有成果を生み出すため個人が自発的に集まり、自発的秩序形成によって作り上げた平等なコミュニティの力のみを使う、財やサービスの生産方法」を言う。
※『ウィキノミクス』によると、“peer production”とは「共有成果を生み出すため個人が自発的に集まり、自発的秩序形成によって作り上げた平等なコミュニティの力のみを使う、財やサービスの生産方法」を言う。
着うた配信問題について
UG-K
今回の問題によりユーザに対して「初音ミク」を使った創作活動や商業展開に不安を与える形となってしまいましたが、御社では今後どのようにコンテンツの流通に関わっていくことを考えていますか?
Crypton Future Media
元々弊社は、サウンドコンテンツの流通や着メロ・着うた配信を運営する会社なので、引き続き従来通りの業務を続けて行くつもりです。
UG-K
今回複数の権利者が絡み合うことにより混乱を招くことになってしまいましたが、今後制作者はどこに二次創作物の商品化などの許可を取り、誰と契約を交わせばよいのでしょうか?
Crypton Future Media
「初音ミク」「鏡音リン・レン」などの商標・キャラクターの版権社は弊社ですので、引き続き弊社にお問い合わせいただければ問題ございません。
UG-K
ネット上では権利処理のスキームの構築を望む発言が見受けられますが、ピアプロがユーザ作品の商業展開の窓口となることはないのでしょうか?
Crypton Future Media
「ピアプロ」は、そこに参加しているユーザの皆様の意見を反映しつつ、新しい機能を追加して行っています。ですのでユーザ様が望めば、商業展開の窓口としての機能も検討したいと思います。
CVシリーズ第3弾について
UG-K
ネット上では早くも第3弾について噂されていますがいつ頃発売が予定されているのでしょうか?
Crypton Future Media
明確に発売時期は決っておりませんが、出来れば今年の上半期内にリリースしたいと考えております。
UG-K
第3弾の声優さんは既に決まっているのでしょうか?
Crypton Future Media
決定済みです。
UG-K
第3弾の製作は現在どのような状況でしょうか?
Crypton Future Media
1回目の録音は終了済みですが、諸般の事情により、データベース構築には今までより時間が掛かるものと予測しております。
UG-K
CVシリーズは第3弾で終了となりますが、次期シリーズは決まっているのでしょうか? もし決まっていたらどのようなものになるかお聞かせ下さい。
Crypton Future Media
現在、プランニング中で具体的にお話できるレベルでは有りませんがCVシリーズとは違うコンセプトを持ったシリーズも考案中ですし、CVシリーズもしくは続編に当たるシリーズも可能性的には有り得ると思います。
最後に
UG-K
鏡音リン・レンユーザをはじめとしたVOCALOIDユーザに対する期待・メッセージなどがありましたらお聞かせ下さい。
Crypton Future Media
VOCALOIDライブラリの制作者として、皆様と一緒にチャレンジし、進化していく事が出来ればと考えております。その為の、準備や経過報告などに関しましては公式ブログなどを通じて随時ご報告させて頂ければと思いますので、宜しくお願い致します。
前後2回にわたってお届けしたインタビューはいかがだったでしょうか。第3弾も既に製作中とのことで早くも期待が高まります。また製品のみに関わらず、新たなサービスやユーザの間で起きた問題も含めて幅広くVOCALOIDに関する質問をさせていただきました。ご協力いただいたクリプトン・フューチャー・メディア(株)メディア・ファージ事業部さんには改めて感謝します。